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2005年04月05日

桜多吾作のゲッターロボ

今でこそ、ゲッターロボ全シリーズが(双葉社)文庫で読めるありがたい世の中になったが、それ以前のゲッター者には、「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」「ゲッターロボ號」を統一感ある装丁で再販してくれた大都社こそが「神」出版社であった(勿論今でもそれに変わりはない)。
「ゲッターロボサーガ(スパロボアンソロジーなどに収録されたエピソードや、若干の加筆を加えて再編された部分がある)」として双葉社版が出た現在でも、「てんとう虫コミックス」「秋田サンデーコミックス」「徳間キャプテンコミックス」の初出の体裁を極力再現してくれた功績は大きい。
もう一つの功績は、90年代の復刊ブーム時に、学年誌バージョンまでもビシッとまとめて出してくれたということだ。
「ゲッターロボ大決戦」「決戦!ゲッターロボG」がそれである。

「ゲッターロボ」の正式原作版は、勿論石川賢のソレなわけだが、当時「小学館の学年誌」や「テレビマガジン」「冒険王」に連載されたコミカライズ版もある。しかも作者は石川賢だけでなく、桜多吾作・安田達矢(一部の代筆)も出陣している。それらを集めたのが前出の2冊だ。(この他にも色々あるのだが、そちらは「ゲッターロボ大全」「ゲッターロボG大全」(ともに岩佐陽一著)で読むことができる。)

今回のエントリーで取り上げるのは、「小学三年生」に連載された桜多吾作版「ゲッターロボ」。

桜多版の特徴を挙げてみると、
*TV版の設定に(恐らく各バージョンでもっとも)忠実。
 大魔人ユラーや大枯紋次などの(効果があったんだかなかったんだかよく分からん)テコ入れキャラも登場している。
 もちろんリョウ達も、普通の高校生だ。
*キャラデザも石川賢版の面影は薄いが、TV版のデザインには忠実。
 「あんた誰」ってくらいにハヤトの印象が違うのだが、意外にTVのシャクレ顎なハヤトには近いデザイン。
 また人には得手と不得手ってものがあるもんで、ミチルに関しては石川版よりこっちのほうが断然可愛い。ヘアバンドや服装もアニメ板に準じている。
*かと思うと、突然凄まじい独自性を発揮し、最後は完全に桜多ワールドに突入。
 例:「チェンジゲッター1!」ではなく、なぜか「セットゲッター1!」とコールする。
 例:後続の「ゲッターロボG」のラストでは、全員特攻してきっちり死ぬ。
   (「グレートマジンガー」でも剣鉄也(基本的にテロリスト)が最後に死ぬ)
 例:武器やメカのギミックが突然独自のものになる。
ちっちぇなー
上の図を見ていただきたい。
足の裏の反り返りっぷりも目も引くのだが、やっぱり斧である。
バージョンが進むたびに、アホほど巨大化していくゲッタートマホークだが、この小ささ。そして最大の違和感発生源は、初代ゲッタートマホーク最大のチャームポイントである「刃の反対側のイボイボ」がない、この一点だ。この上ないシンプルさと親しみやすい大きさが、かつてないホームセンター感を生むことに成功している。成功させる意義はよく分からんが。
ちなみにイボイボは第三話から発生している。これもゲッター線のなせるワザなのだろう。そうだよね、スティンガー君。

さて、桜多版の真骨頂はやはり最終話、ということで、桜多版ゲッターの最終回である「第10話」もなかなかたまらないエピソードだ。

冒頭、何の前ふりもなく(コミカライズというものはなべてページが少ないものだ)、地竜一族の手によってゲットマシンが盗まれる。草原でのほほんとダベっていたゲッターチームは度肝を抜かれ、研究所に急行する。
切羽詰るリョウたちに、早乙女博士がこれ以上なく簡潔に事態を説明する。

「すまん ちょっとした不注意で」
「ゲッターロボの強さは きみたちがいちばん知ってるだろう」
「もう どうしようもないだろう」

なんて諦めのいい(危機管理意識の低い)早乙女博士。

敵に乗っ取られたゲッターは、当然ながら早乙女研究所を強襲する。すかさずバリアを展開するが、

所員「うわあ かるくやぶられた

ガキンチョにも分かりやすい簡潔なネーム!低学年コミカライズの教科書ですよ桜多先生!
絶体絶命の早乙女研究所に、帝王ゴールはご満悦。

いいもんだ…

いいもんだ」なんて、「成人した息子としみじみ焼き鳥屋で飲んでるお父さん」みたいなコメント。さすが苦労人ゴール様。味わいが違う。

早乙女博士、絶望的な状況に陥って、生来の狂気を発揮。静止するリョウを振り切って、

「わしに考えがあるんじゃ ゲッターに もっとエネルギーをやるのじゃ」

それに驚くリョウ。
「なんですって! そんなことをしたらゲッターロボが 一年間もめちゃくちゃにあばれてしまいますよ
斧にイボが吹き出ました
当時の小学三年生といえば、実にアホガキ真っ盛りの季節。「暴走」なんて言葉は通じないかもしれない。そこで「めちゃくちゃにあばれてしまう」と表現。しかも「一年間」という具体的な提示が妙に恐い。
まあ結局は早乙女博士の暴挙が功を奏し、
博士「人間には影響のないゲッター線をいっぺんにあびせたから 地竜一族だけが やられてしまったのだ」
リョウ「さすが博士」
    「さあ 研究所を二度と直して ゲッターを二どとぬすまれないようにしようぜ
という言葉で大団円。
さっきのいきさつで、「人類にゲッター線の影響ない」と言い切れるもんなのか、そもそも早乙女研究所に侵入を許したのは果たしてハード的な問題なのか、とか色々疑問は残るのだが、とにかくこんな終わり方をするのだった。気が付けばゲッターチームが一つも活躍してないのが印象的だ。

ここで興味深いのは、「ゲッターエネルギーと暴走」という要素が、恐らくは初めて登場していることだ。
「號」で真ゲッターが登場するまでは、ゲッター線はそれほど気まずい設定のものではなかった。ムサシのケロイドな最期は確かにトラウマインパクトだったが、それも「ゲッターエネルギーを最大放出した熱によるもの」であり、基本的には「人類には有益、ハチュウ人類には有害」なものに過ぎなかった。TV版にいたっては、呑気にゲッターロボ野焼きまでする有様だ。
「ゲッターエネルギー浴びすぎてゲッターが暴走」という発想は、かなりいきなりだが、ここで生まれていた事は確かだ。

ところで、色々なバージョンを読んでいて切実に抱いた疑問なのだが…
恐竜帝国の科学長官って、結局「ガレリイ」と「ガリレイ」のどっちが正しいのだろう…


投稿者 zerodama : 2005年04月05日 01:28

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