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2005年04月09日

銭を払ってオーダーを強制される屈辱

*注:このエントリーは、あくまで私の主観に基づく感想とレポートであり、これから同店舗を訪れようとする方を制止したり、店舗の風評を卑しめようとする意図のものではありません。
味や店のシステムに関する評価は人それぞれ…ということは言うまでもありませんし。

<店名>「こだわりの味噌工房 らーめん哲」
<場所> 酒田市北新橋 国道7号線西側

食い物屋でこんなに腹が立った体験は、実に久々だった。
同店敷地には、以前「味仙人」というラーメン屋があった。改装した後、この店にリニューアルオープンしたらしい。
「味仙人」時代はごく普通の店構えだったが、今度は黒塗りの大きな看板に、メニューのイラストや「いかにこだわっているか」のウンチクをババン!と書いて、「こだわりの店」であることをアピールしている。第一印象は「ちょっと値は張りそう、でもうまいものが食えそう」という感じで、いかにもラーメン好きの心をくすぐりそう。そしてそれは(デザインの力として)成功していると思う。あまり庄内ではみかけないテイストでもあり、確実に目を引いている。
オープンしたてで、花輪が沢山あって賑やか。駐車場も埋まっていて客足も順調のようだ。
思えばこのとき、駐車場が満車であれば、こんな目にあわずとも済んだのだが。

入店。
オープンしたばかりの店だから、スタッフが多少ぎこちないのは仕方ない。客の誘導にマゴマゴしてたのはそんなに気にならなかった。
問題はオーダーである。

外の看板にデカデカと描かれたメニュー。「黒こく」なんてのはウマそうだねえ、なんて談笑しながら店に入ったわけなのだが、着席するなり店員から説明を受ける。
このカードを見ていただこう。(クリックすると大きなサイズになります)
ramen.jpg

これは客が会計を済ませた後に渡されるものなのだが、これとほぼ同じものがメニューと共に置いてある。それを見せながらの説明。
店「スタンプカードはお持ちでしょうか?」
私「いえ、初めてですが」
店「初めての方は、うちの味を知っていただくために、最初はこの『現代』から始めていただくことになっているんですが、それでいいでしょうか。」

???
最初は耳を疑った。
「初めての方には、『現代』をオススメしております
の間違いだと思った。

私「えっ、じゃあ今回はこの『黒こく』とかは頼めないんですか?」
店「そちらのメニューは、一つずつ上のものを食べていただいて、スタンプを押していってからお出しする事になっているんです。申し訳ございません。」
店「5段階を食べていただくと、『幻の味噌ラーメン』を食べていただけるようになっているんです」

つまり、このシステムでは、「黒こく」を食うには、4回来店し、興味があろうがなかろうが「現代」「伍年後」「拾年後」「白こく」を食ってから、5回目じゃないと頼めないってことだ。出してもらえないのだ。
メニューにある(看板でも客を寄せる材料にしている)のに、「お前には出せない」と言われるわけだ。これは、当然ながら、「うちは醤油ラーメン一種類しかやってないよ」って店に入るのとは根本的に違う。
よく、メニュー構成を番付表とかになぞらえて、遊び心で「小結」「大関」「フェザー級」なんて付けたりしてる店があるが、それは大抵、例えば「量」とか「辛さ」とか「豪華さ」を軽くなぞらえているだけで、「それに見合う客でなければ注文できない」なんてことはまずないわけで。
どれだけこだわってるか知らんけども、否応ナシに、勝手に店側で定められたヒエラルキーを強制される。単に「ヒエラルキー」という表現にとどまるものではなく、あまりに厳然としているソレは、もはや「カースト制」と呼ぶにふさわしいかもしれない。久々に大河原級の屈辱
ああもう、今思えば、ここでさっさと席を蹴って出てくれば良かったのだが、私たちも腹が減ってたのと、「そこまで高飛車に出るなら、どれだけうまいもの食わせてくれるのか確かめてやろーじゃねーか出せオラ」という気持ち、そこまで言うなら、並味噌ラーメンでもうまいのだろうという期待もあり、顔を引きつらせながらも「現代」とギョウザをオーダーしてみた。

いやーそれにしてもこのカード、高いところからモノを言うったらない。
何しろ、並味噌ラーメン「現代」の説明。初手から
「はじめの一歩。幻に向けて、舌を肥やしていくべし。
である。
もう客に対して、「日頃ロクなラーメン食ってないでしょ」「微妙な味なんかわかんないよね」「そんな人には、いきなりうちの上位メニュー出してもわかんないだろうしー」と、ケンカ売りまくり。
いや、こっちは食い物を買いに来てるのだよ。ケンカを、じゃないんだよ。
他にも
「次は、より深みのある味。」
「ご理解いただけたか?」
一段づつ階段をお上がりください」(上の画像中、緑の線で強調表示しています)
と、とにかく、ハガキ半分ほどの大きさながら、「余計なお世話」に満ち満ちている。

<スタッフ>
しばらくして、「現代」が運ばれてくる。
私は普通盛り、相方は大盛りを頼んだのだが、店員のお兄ちゃん、一度目の前までラーメン持ってきてから、なんだか困ったような顔をして、なぜかもう一度ラーメンをカウンターまで持っていく。
厨房スタッフに「どっちが大盛りでしたっけ?」と尋ねている(見てわからんのか)。
あの~~、ご自慢の「こだわりの麺」がのびるんですけどぉ~~。
もう一度持って来る。ドンブリ傾いていて今にも汁が零れそうで怖かったよ兄ちゃん。
食い始めて数分、おねーさん店員によりギョウザが運ばれてくる。
「1枚でしたっけ2枚でしたっけ?」
なぜ客に訊く。
さりげなく伝票見て確認しときなさいよ。
この店に限らず、客に「でしたっけ?」という口利きをする店はロクなもんではない。
(某洋食店で、セットメニューのサラダを食後のコーヒーと共に「サラダまだでしたっけ?」と運ばれてきた時のインパクトには負けるけど…)
上にも書いたように、オープニング時期だから大目に見ようと思ったが、客(の味覚)を教育しようとする前に、スタッフ教育に力を注いだほうがいいと思うが。というか、注げ。

<んで、味>
以下、あくまで主観であることを繰り返す。
総合的に「フツー」。「わざわざ外で食べなくてもいいかなあ」という意味での「フツー」。
個人的には、味噌のウマミよりもしょっぱさを強く感じた。
スープベースに関するうんちくが店中に貼られているが、「語るだけのことはありそうな気がするなあ」という説得力(例えば、「千石や」で感じ取れるようなソレ)が味の中に感じられなかった。
温度はぬるい(配膳にまごついていたせいかな?)。
麺は太めで、味噌にはマッチするのだろうが、ヌルみが強いのはいただけないと思った。茹で方か、湯の状態か、はたまた湯切りの問題か。
これだけの勿体付けと値段なのだから、ここで充分に「今までの味噌とは次元が違う!」と思わせないと、次に繋がらないんじゃなかろうか?

<量>
標準的。
ただし酒田のラーメンの麺の量は尋常ではない(普通盛りでも、他の地域の「大盛り」の量が軽く入っている。盛りの上品な店なら「特盛り」レベルかもしれない)ので、地元ラーメンに慣れた人には「少ない」と感じるかもしれない。

<値段>
酒田(標準的な価格設定より少し低い店が多いと思う)の相場で言えばかなり高い部類だろう。
この「現代」で600円台(レシート捨ててしまったので詳細忘れた…)。上位の「黒こく」あたりは800円台だった。「一杯の味噌ラーメン」に払う価格を客側が見出せるかどうかがポイントだろう。
ちなみに、最終奥義(笑)の「幻の味噌ラーメン」の価格は、明記されていない。

店内でも、メニュー説明を受けるたびに「エェー」テイストの声が上がっていた。
酒田の人間は、「新しい店にアンテナを伸ばすのは機敏で、足を運ぶが、『あそこは二度行かなくていいや』という見切りも早い」と、地元の人間は言う。
酒田のラーメンは、「煮干・昆布を基調にしたシンプルな薄めの醤油味」が全体的に支持されている。その反面、味噌ラーメンにはスポットが当たりづらかった。出している店でも、醤油用のベースだと、シンプル魚系であるが故に「味噌汁」っぽくなってしまっているところも少なくなかった。
この土地で「味噌ラーメンメインの店」がどう展開するかという興味はある。比較的若い年代のラーメン好きがキーになるだろう。受け入れられるかどうか、だ。
店構えのハッタリは、ラーメン好きの心をくすぐるには充分で、「TVチャンピオンラーメン王がプロデュース」という付加価値もうたってあるため、しばらくは近辺の市町村からの客足もあるだろうな、とは思う。こういう勿体付けに付加価値を見出し、システムよりも味を評価して通う人もいるだろう。考え方は人それぞれだ。
また、初回の人間には屈辱だが、「黒こく」とか「幻」をオーダーできる程通った客には、ある種の優越感が保証されるシステムともいえる。大きさで言えばイヌノフグリぐらいの優越感だと思うが。また、この屈辱をバネにし、上位メニュー食いたさで通うポジティブな人もいるだろう。
そういう方は是非、「幻食ったよ!」「黒こくはこんな味だったよ!」というレポートを発表してくださる事を期待している。
私は、いくらうまいラーメンであろうとも、もの食う際に、マルチ商法のディストリビューターみたいな階級制を強いられるのはゴメンなので、二度と行かないけれども…

ところでこの「味噌ラーメンカースト証明カード」だが、よく見れば「有効期限」がある。
「2005.7.9」………
3ヶ月内に6杯食えよ、ってことらしい。
そうですか。とにかくすごい自信だ。いろいろと。

<現実的な対応>
友達・家族・職場とかでカードを使いまわ(して、ハンコをためる)すのがもっとも現実的に色々なメニューを楽しめる方法だろう。
ところでこのシステム、うっかりカードを忘れたりすると、常連でも上位メニューが食えなかったりするのだろうか…

補足:味噌ラーメンだけでなく、塩・醤油ラーメンもある。そちらは各1種類で「一見客」でもオーダーでき、階級制ではない。
ギョウザは二種類。ミニ丼などのサイドメニューと、別オーダートッピングあり。

投稿者 zerodama : 2005年04月09日 17:14

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コメント

激しくウケる!!うわーぜってぇ行かねぇ・・・
酒田のヒトはガッツリ保守的だから、そんな店は間違い無く受け入れないよなぁ。
オレは味噌ラーメンだったら「東軒」。
妹の旦那が札幌生まれなんだが、酒田の味噌ラーメンで唯一認められるのが「東軒」だって言ってた。

どーもお久しぶり。
いつだったかTSUTAYAから車で出るのを見た、そういえば。

投稿者 eng : 2005年04月11日 11:17

お久しぶりですー。お元気そうで何より。
相変わらずラーメン食ってウダウダ過ごしてます。

>ラーメン屋
とにかくあのカードを一人の方にでも見て、笑っていただきたかったのです。アップしたかいがありました。
「東軒」はヨイですねー。うちでも大好きです。今度是非味噌を頼んでみようと思います。
けっこう足を運ぶんですが、なぜか行って見た日に限って「臨時休業」の札がかかってて、なかなか食べれません。次こそは。

投稿者 大道寺零 : 2005年04月11日 17:01