2005年09月05日

まほおつかいミミッチ出版予定

松田洋子大先生のブログ「水泡日記」によれば、「ミミッチ」2巻が9月30日発売とのこと。チェック。

ところで、同エントリー内にでている「くどい太めの納豆売り」という曲、初めて知った。なんだかダルいサプライズだった。
要するに「『ナタリー』という部分が『納豆売り』って聞こえるよね」というだけで、全編をムリヤリ空耳に仕立ててしまった曲。語り部分が「ヒロシ」の芸風を先取りしていると言えなくもないが、これまたどーでもいいことだ。
まあ、全体に漂う「どーでもよさ」がけだるさをさらにアップさせてるなあ。
この手の曲、日出郎の「燃えろバルセロナ」なんかも(「ミルクチャン」のおかげで)ハンパに有名だが、ああいうものは定期的に出て来るんだろうか。
サビの部分が「エクスタシー得るなら肛門よ~」と聞こえるというだけで、じゃあゲイの人に歌わせてみよう→で、日出郎に歌わせてみたという、これまた企画の初動段階からどーでもよさ炸裂のシロモノだった。
一応音声ファイルで所有しているが、その部分以外の空耳が本当に強引なもんで、歌詞カードを持っていない身には聞き取りが困難を極めるのであった。

投稿者 zerodama : 00:46 | コメント (0) | トラックバック

2005年09月04日

「毎日かあさん」論争の横道で

「毎日かあさん論争」のエントリーについて、義弟からちょっと興味あるメールが届いたので、本人の承諾を得て一部引用。
ちなみに彼は現在東京都の、しかも話題になっている地域ほど近くで生活している。

私見では、
サイバラ氏が割烹着を着て写ってる、
「あの路地、あの提灯」の写真が気になるんです。
ちょっと吉祥寺(武蔵野市)に足を運んだヒトの
80%には”ロケ地”バレしてしまう
駅前ハモニカ横町(戦後の香り漂う呑み屋街)にある
「みんみん餃子」の提灯なのです。

ハッキリいって、
吉祥寺(武蔵野市)の”B級ランドマーク”なのです。
仙台で云えばトラ横の「変な動く人形」みたいな・・・。

・・・そこから、
「近所の公園」ってのが、
「井の頭恩賜公園」ってことも判明し・・・。
(確かにミドリガメも危険なカメもご在住。)

ま、
全国レベルじゃバレない話だけど。

なるほど…
確かに「ロケ地はロケ地で別に考えるべき」と言えばそれまでだが、地元の人間でなくては気付かない「ロケ地バレ」。「武蔵野市中の」というネーム以外にも、東京の人には「武蔵野のほうにいるのかな?」と匂わせるものがあったということで、地方在住者としては面白く拝見した。義弟くんありがとう。

彼への返信メールの中で、ちょっと他にも思う事を書いてみた。

今回は、学校のコメントがどこまでホントかという疑問もある+サイバラが特に人気のある作家だったので大きな論争になってますが、そうした読者が多いものだけにとどまらず、同様の問題はこれからけっこう起こっていきそうな気がしますね。
例えば、保護者が自分のサイトのブログで、子供の学校のほかの生徒やクラブ、学校スタッフの事について、かなり具体的に、あるいは実名そのものを出して記述したり…ということは既に珍しくない事です。(単に面白い話題であったり、学校や個人への批判であったり、それは様々ですが)
それがトラブルや不満がらみのことであれば尚更で、そういう事態への対処も、どの学校でも心得ておかなければならないことになるだろうなと思いました。

個人Webページを長くやっていると、そういう部分の配慮というかぼかし加減についてある程度心得があるものですが、最近単に「気軽な日記ツール」としてblogを利用している層の大半は、個人が特定できそうな内容についての心構えや危機感・管理能力がかなり欠如してきていると感じています(他人だけでなく自分のことについても同様なので、Blogやmixiなどの日記で、住所や個人が特定できる事を書きすぎ、ネットリアル問わずストーカーの標的になるトラブルが急増してたりします)。
勿論学校側でそこまで踏み込んで注意する事は難しいので、「起こった時にどう対応するか」というのが、危機管理マニュアルに加えられるのはとてもリアルな流れだろうと思います。
(以上、返信内容を一部加筆訂正したもの)

学校側で「ホームページやBlogに書く場合には、学校名や個人名を伏せること」というようなガイドラインを事前に定められればそりゃ楽だけども、当然その時点で大きな問題になることは容易に想像できるわけで。(権限があるとすれば、レンタルスペースやBlog、ソーシャルネットワーキングの管理者だけだろう)
故に学校からしてみれば、常に「何かが起こった後にしか対処できない」のは辛く歯がゆいものではあるよなー。Webに限った事ではないけれど。彼もまた教育関係の仕事に就いているので、こんな話も時折交わしたりする。私はもう学校とは関係のない身の上だけど、身内がそっち系に多いので、やっぱり気になることもあって。

ところで、「毎日かあさん」や、鴨志田氏と結婚して以降の西原作品を見ていると、「子ども」というものへの認識に占める「無条件の愛情」が相当強まっている事がよく分かる。
家庭を持った、妊娠し母になったということも勿論あるだろうが、それ以上に、「タイやカンボジアなどの国で暮らし、現地の子と親に直接触れ合って生活した」影響が強い。特に(複数の作品で何度も描かれているが)、貧民層や戦災孤児などを多く目の当たりにしてきた鴨志田氏の実感(「子どもってもっと気楽に引き取っていい」等)に共感した部分もことのほか強い事をひしひしと感じる。
アルコール依存のトラブルなどで結局離婚という結論に至りはしたが、鴨志田氏とアジア各国で暮らした経験は彼女の中でとてつもなく大きく、また鴨志田氏という人間も、価値観に大きな影響を与えた・特別な人でなんだろうなあ…と、最近思えるようになってきた。

投稿者 zerodama : 17:23 | コメント (0) | トラックバック

2005年09月01日

「毎日かあさん」論争

「毎日かあさん」論争、表現の自由か教育的配慮か : 文化 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

文化庁メディア芸術祭賞を受賞した漫画「毎日かあさん」を巡り、作者の漫画家西原(さいばら)理恵子さん(40)と東京・武蔵野市の間で論争が起きている。

 西原さんの長男(8)が通う同市立小学校が、西原さんに「学校を作品の舞台にしないでほしい」と申し入れたためだ。

 「表現の自由への圧力」と抗議する西原さんに対し、市側も「正当な教育的配慮」と譲らない。双方が文書で主張を繰り返す事態となっており、9月2日の同市議会でも取り上げられる予定だ。

 問題となったのは、授業参観の場面。主人公の母親が、落ち着きのないわが子を含む児童5人を「クラスの五大バカ」と表現し、ユーモアを交えつつ、子どもの成長を見守る内容だ。

 この場面が紙面に載った直後の昨年11月、長男の担任の女性教諭(40)が西原さんを学校に呼び出し、「迷惑している」「学校を描かないでほしい」と注文をつけた。

 西原さんは翌12月、毎日新聞社の担当者と同小学校に出向き、校長らに「保護者だからといって、編集者を通さず作者を直接呼びつけるのは非常識だ」と抗議。校長らは「学校に落ち度はない」と主張したという。

 西原さんは、父母の一部から「学校とトラブルを起こすならPTA活動に参加しないでほしい」と告げられたのを機に、今年6、7月、弁護士を通じて市側に「作品はあくまでフィクション」「公権力による表現の自由の侵害ではないか」などの文書を送った。これに対し、市側は、「他の児童や保護者への配慮をお願いした」「作品中に『武蔵野市』の固有名詞もあり、児童の人権に教育的配慮を求めることは当然」などと、8月までに2回、文書で回答した。

最初にこれ関連の記事を見て思ったのは、高校生時代に学校を相手取って訴訟を起こした過去のあるサイバラのこと、学校相手のバトルでは一歩も引くまい…と思ったのだが、公式サイトコメントを見ると、そんな予想とは全然違うことになっていた。

それによると、
・学校とは、最初の呼出そのものに関しても話がついており、担任との関係は良好
・その後PTA活動からハブられたために再び文書で抗議
・武蔵野市からは「学校が指示して西原氏を排除している事実はない」と回答
・今回の休業の原因は、この件で心身に不調をきたしたため
・表現の自由や人権を求めての抗議ではない

ということで、Webニュースでの記事・報道とはかなり齟齬があるのだが、さて。

これまで長年サイバラ作品を呼んできた人にとっては、このコメント、あまりの殊勝さに驚くかもしれない。自分もそうだった。
ここでつっぱって、矢面に立つのが自分だけであれば彼女もそうしたかもしれない。
しかし学校での話、戦いと混乱の最前線にいるのが息子さん本人ということを思えば、やはり「おかん」としての対応をしなければならなかったのだろうか、と思った(娘ももう少しすれば同じ学校に入るのだろうし…)。
これは「角が取れてしまった」とか「毒が薄れた」というより、ただひたすらに「おかん」であるから、ということなのかもしれない。

それにしても、学校・武蔵野市側の主張で「武蔵野市と特定した部分もあり」というくだり、「アレ?そんなの載ってたっけ?」と思い出せずに、「毎日かあさん」を再読してみた。
確かにあった。一ヶ所だけ。
「お入学編」の67P1コマ目。しかも、学校の場面ではなく、息子と友達が公園で遊ぶシーンの説明ネームとして。

「私の家の近所に公園があり そこの池には 武蔵野市中の子供がめんどくさくなって捨てたミドリガメが大量に生息している」

という一文だ。
さ、さりげない…正直注意して読みながらも、あまりにさりげなくてスルーしてしまうところだった。
学校の場面に「武蔵野」という言葉が入っているならまだしも、ここだけ(まあ、武蔵野に住んでるということは分かる文だが)でこんなに大騒ぎしなくても。
この騒動で初めて、「あ、サイバラって武蔵野市に住んでたんだ…」ということに気付いた読者は多いのではないだろうか。
学校やPTAの皆さんよ、「学区や学校が特定されるおそれが…」という懸念を否定するわけではないが、過度に反応する事でかえって「武蔵野市の公立小学校のどれか」ということが特定される事態になってることに気付いてるかな?

私は、「毎日かあさん」を読んでいて、幼稚園やら小学校、父兄や子供のようすが、「なんかおおらかでいいところなのかな」という印象を受けていた(もっとも学校に呼び出される場面は「お入学編」に書いてあるが)のだが、現実は色々違っていたようだ。
同作では基本的に、(バカもズルいのもひっくるめて)子供と、子育てに向かい合う親たちに相当愛が注がれているのが特色(ゆえに、子梨にとっては時折読むのがヘビーであるほどに)なのだが、初めてサイバラ作品に触れる人には毒々しいものに見えたのだろうか。

投稿者 zerodama : 10:53 | コメント (2) | トラックバック

2005年08月21日

池上先生がステキな件

とろとろですとろん:池上先生の大人の対応

各所で話題になっていたのだが、時同じくしてイドさんとバードチーフさんから情報提供メールをいただいたので、私もエントリーを書いてみたっす。

文中で、
「ボクはギャグをうまく処理できないというか、そういうのが苦手で」
とおっしゃっている池上先生。確かにそういう面はあると思うが、その気はないのに醸し出してしまうおかしみに関してはなかなかどうして。特に「クライングフリーマン」の伝説的シーンの数々を思うと。(特に小池センセとタッグを組んだ時に醸しがちだと思う)

いやーしかしこの包容力、さすが看板屋・貸本作家時代に下積みが長かった方は人間の出来が違うよなあ。

投稿者 zerodama : 00:16 | コメント (0) | トラックバック

2005年07月15日

クロマティまだ怒る

クロマティさん、映画差し止め仮処分取り下げ 提訴検討 (朝日新聞) - goo ニュース


結局、「登場人物や団体名は実在のものとは無関係」というテロップを流す事で合意に至ったらしい。
差し止め申請の一件がなくても当然流してたんじゃないかと思うんだが…
海外に「クロマティ高校(つづりは違うが)」実在するし。

多くの人が「話題づくりのためのマッチポンプで、テキトーに手打ちするんじゃないか」と言っていたが、現時点ではまだまだお怒りのようで

クロマティさんの代理人の弁護士は「今回の合意は名前が使われることを許諾したものではない」としており、近く、配給会社と原作の漫画を雑誌で連載している講談社を相手に損害賠償請求訴訟を起こす方針。講談社に対しては連載差し止めも求めるという。

とのこと。
それにしても、この映画が、橋本を見れる最後の映像となってしまったのね…

投稿者 zerodama : 19:31 | コメント (0) | トラックバック

2005年07月11日

ComicBaton

NAPORINさんからお受けしたComicBaton。
お答えが遅くなってしまい大変申し訳ございません。

# Total volume of comic on my Bookshelf(本棚に入ってる漫画単行本の冊数)
ある意味一番しんどい質問だったかも。
棚一つに二段に入れて50~60冊ぐらい。
マンガ入りの書棚の数を数えるとおよそ45段なので、単純に掛け算して2200冊くらい?かな。
とても正確な冊数を数える気力がない;
実家にもいろいろ200冊くらい置いてある(ドカベンだのスケバン刑事だの)。
これでも結婚する時にけっこう処分したのだが。

# Comic thought to be interesting now(今面白い漫画)
基本的にあまり雑誌チェックはしてないっす。続き物も単行本で読んでます。

・「Moonlight Mile」 太田垣康夫
 最近ツライ展開が続いているので、読むのが精神的にきついのだが…内容と画面の濃さは凄み溢れる。単行本でまとめて楽しむので、「あえて雑誌はガマン!」と思わせる作品。

・「花引き」 小池一夫・ふんわり
 飛距離のでかい小池マンガの中でも、キチガイ度がハンパでないマンガ。
 絵師に画力はともかく迫力が欠けているのが残念だが、その欠けている分を話のメチャクチャ具合で補填しており、結果誰にも止められない状態に。世界唯一の「えいこーらマンガ」。

・「ゲッターロボ」シリーズ 石川賢
 「アーク」の続きがいつか描かれるはずと信じているから、あえて「今」に分類した。私の中では「ゴウ」以降はちょっと…なのだけど、ゲッターシリーズはやっぱり不滅。何回読んでもこれが「てんとう虫コミックス」第一期生だったという事実は驚異的だ。
 登場時のリョウとハヤト、そして敷島博士にグッとくるかどうかが、「石川賢リトマス試験紙」だと思う。なんてニッチな試験紙。

・上野顕太郎のマンガ
 「帽子男」シリーズが代表作だが、とにかくなかなか見かけないんだよなあ~…次に作品集がまとまるのはいつの日か。

・「鬼堂龍太郎・その一生」 田中圭一
 主人公より、春川専務とかロベスピエール大越先生などのキャラがいい味出しすぎ。

「誰も寝てはならぬ」 サラ・イネス
最初はラブストーリー成分が前面に打ち出されていて今ひとつパワー不足かなと思ったが、それぞれのキャラクターの味が出てきてからイネス節が力強くなってきた。セリフやナレーション(というよりはツッコミ)の文字が手書きでなく写植になってしまったのが残念(以前は総手書きで、あの文字がよかったのだが)。
キャラとしてはマキオちゃんとかヤーマダ君とか、要するに恋愛パートに絡まなさそうな人々が好きだなあ。

# The last comic I bought (最後に買った漫画)

・「続・新ワイルド7」 望月三起也
・「無限の住人」18 沙村弘明

 惰性で購入。主人公の卍さんが中表紙にしか登場せず。もはや神山なみの存在感に。
・「ワンナウツ」14 甲斐谷忍
・「鉄腕バーディー」9 ゆうきまさみ
・「炎の筆魂 三之拳」 島本和彦

# Five comic I read to a lot, or that mean a lot to me (よく読む、または特別な思い入れのある5つの漫画)

・「人造人間キカイダー」 石ノ森章太郎
 「009」と迷ったのだが…「見事に完結している」という完成度でこちらを。コウモリ男のエピソードが好きだったなあ…
 小学校の時に買った朝日ソノラマの愛蔵版で所有しているのだが、愛読しすぎて崩壊しはじめている。ヤバイ。
 石ノ森の「境界で悩めるナイーブヒーロー」の真骨頂であり、ファーストシーンからリンクするラストシーンは絶品すぎ。アシ絵が目立つのが残念だが、作画に関しては「石森プロ」作品と割り切るのが吉なのかな。

・「デビルマン」 永井豪
 これと「けっこう仮面」の2作で、今後どんな駄作をタレ流し続けようとも、永井豪はマンガ家としての使命を十分に果たしたと思う。本屋で立ち読みし、ラストの巻でショックと感動で動けなくなるという初めての体験に出会った。

・「電波オデッセイ」 永野のりこ
 もしも思春期にこの作品と出会っていたら、私の人生どうなっていたのだろう、と思わせる傑作。心が痛むシーンが多く、精神状態や個人的体験次第ではかなり鬱になっちゃったりする(鬱状態だと、ヒーリングよりも中盤の展開で受けるダメージのほうがでかかったり)のだが…すげこまのような超科学が出てこない分、キャラも読者自身も、永野のり子のテーマである「みんな以外の自分」と真正面から向き合わされてしまうのだ。
 「すげこま」を愛読していた方は、甲ちゃん再登場にグッと来るものがあるのでは。

・「極道兵器」 石川賢
 骨の髄から痺れるような石川賢グルーブをしゃぶり尽くすならこの作品だろう。主人公の物騒さ、加減を知らない人体改造、独りよがりな義理人情の暴走、むやみな銃火器、「そんなセリフ言わせちゃうか~?そしてやっちゃうか~?いいの?私はいいけど!」な物騒で不謹慎発言の連発。石川賢の魅力の全てが凝縮している。誰かに石川賢を勧めるならコレを選ぶだろう。入門にして真髄。

「超感覚ANALマン」 安永航一郎
 安永航一郎の商業誌作品では誰もが認めるK点越え過ぎの作品。
 全体を見ると「頑丈人間スパルタカス」の方が好きかも知れないが、なにしろ1巻以降がいまだに出ていないので比較しようもない。
 2巻発売のめどは一向に立っていないようだが、いつかはと信じて待ち続けている。
 そういう意味もあって思い入れが強い一作。

# Five people to whom I'm passing the baton (バトンを渡す5名)
・ふらここさん(mixi)
・関ステレ夫さん
・1031さん
・にぼしのすけさん(mixi?)
・ひげ蔵さん(mixi)

バトン企画には色々賛否両論があって、お好きな方もそうでない方もいらっしゃると思いますので、お好きでない方はスルーなさってくださいませ。もし乗っかってくださるという方はよろしくお願いします。

投稿者 zerodama : 12:56 | コメント (5) | トラックバック

2005年06月30日

目を離したスキに

昨日の「ストレッチマン」「トンデモスナイパー」「とにかく見てるほうが恥ずかしい自称カンフー踊り」にあまりにもヤられてしまい、引き続き「新條まゆ」について検索してみる。
少女漫画情報館」あたりを読んでいるうちに、少女漫画板で話題になっている作家や作品の事が段々分かってきた。
何しろ、ここのところ「少女漫画」といっても、山岸涼子を買い集めたり、有吉京子の文庫化になったものを買ったくらいで、雑誌の状況が(「少コミ」がどエラいことになっている、レディコミをすっ飛ばしたスケベ内容の作品が、低年齢層に受け入れられている、という漠然とした事だけで)ほとんど分かっていなかったのだが、この作家を中心に
・レイプ・拉致られ
・天然もしくは文字通り人形みたいな都合のいい女+鬼畜男
・男も女も言動があまりにも電波、脳味噌は20gしかないと思える低脳さ
・いともやすやすと調教される女
・出てくる男は皆主人公に惚れて、逆ハーレムを形成できる

という、「頭悪くて鬼畜」で「どこのメーカーさんのエロゲですか?」と聞いたならエロゲクリエイターに失礼としか言いようのない作品が猛威を振るっているらしい。青カン駅弁3P4P何でもアリ。
少年誌・青年誌が何回か規制を受けて、「エイケン」や「オヤマ!菊の助」ですら乳首を隠したり消されたりしていた間に、少女漫画はスイスイとものすごく遠く高くDive in the skyしていたのだなあ。

というわけでちょっと検索すると、

「お股パカーン」

という言葉とこの作家が切っても切れない関係にあるということが分かってきた。
ので、「お股パカーン」で検索すると、ほどなく「快感フレーズ」「覇王愛人(スナイパーと怪ダンスはこの作品)」のレビューを載せているページを発見……って、誰かと思ったら西洋スーツの名無しさんのサイト「日々是口実 天からカジメ!」だったのか!ごぶさたしてすみません(ここで書いても…)
西洋スーツさんの文章と突っ込みが絶妙なので、未読の方は是非。
特に「覇王愛人」の最後のコマがものすごいことになっとります。
元ネタの放射能があまりに強いので、まとめて読むと健康に被害を与える恐れがあるので注意。

<わかったこと>
・あの脳が気の毒なスナイパーは、「世界一の暗殺者」というふれこみで登場したらしいよ。

そして、名前とセットで親しまれている「お股パカーン」の絵はこちらのページで。
しかし1巻でいきなりこの体勢。
「まぼろしパンティ」だって、そんな状況を披露してくれたのは最終話だと言うのに…
私はもう完全に浦島太郎…
内容はといえば、男も女も、腱が伸びきっているんじゃないかとすら思えるお股蝶番のとんでもない緩さがもうね。
「少女コミック」が「少コミ」ではなく「性コミ」と言われる理由がよくわかる。

そんな一方で、時間を止めた亜空間にひっそりと生き続ける少女漫画もある。

この前本屋に寄った時、「ちいさな恋の物語」の新刊が出ていて、まだ新刊が出ると言う事実に、驚きを通り越して、戦慄を覚えた。おそるおそる開いてみると……

チッチとサリーがまだ高校生だった。

う、うわぁ……
君たちは一体何十年間高校生の清い清いお付き合いを続けるつもりなのかと。
制服だって30年前のセーラー、スカート丈もしごく健全。
恋に悩んだり喜んだりするレベルも30年前の女子高生のソレ。

町で駅弁し放題、学校で汁流し放題の現在のヒロイン(というかミート奴隷)達とは、もう脊椎の形からして違う、まったく別系統の生物、むしろ珍獣としか思えない。これが出続けている・買う人がいるってことはすごいもんだ。

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2005年06月29日

学校存続の危機

クロマティさん、「魁!!クロマティ高校」差し止め申請 (朝日新聞) - goo ニュース

 今夏公開予定の映画「魁(さきがけ)!!クロマティ高校THE☆MOVIE」について、元プロ野球巨人のウォーレン・クロマティさん(51)が29日、「氏名を無断で使われ、パブリシティー権(著名人がネームバリューの経済的価値を独占的に使う権利)を侵害された」として、公開差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。

 申立書でクロマティさんは「名前を使う許諾を与えたことはない」としたうえで、「クロマティ高校の生徒たちは授業にほとんど出席せず、他校の生徒との抗争に明け暮れるなど素行の悪い学生として描かれている」と指摘。「そのような作品に名前が使われていることに極めて強い憤りを感じた」としている。

 映画の原作となったのは、野中英次さんの人気漫画「魁!!クロマティ高校」。講談社の雑誌「週刊少年マガジン」で連載中。架空の「都立クロマティ高校」に通う高校生の日常を描くギャグ漫画で、ほかにも「バース高校」や「デストラーデ高校」など、日本で活躍したプロ野球選手の名前をつけた高校が出てくる。


連載から何年も経った今になってこういう反応をされるということは、「映画化がアダになってしまった」と言わざるを得ないんだろうなあ。確かに出るとこ出られてしまったら、「クロ高」側に不利な材料ばかり。(今の若い読者は「クロマティ」も「バース」も、まして「シピン」あたりの名前も、実在の野球選手だったことも知るまいし、イメージが傷つけられようもないとは思う。その名前を知る世代は逆に、このマンガのタイトルのおかげでクロマティの記憶の風化が防止されていると言えなくもないのだが。)
そもそもこのマンガ、「名前を勝手に使った」ってことで怒られるのであれば、野球関係は勿論、中沢新一やら竹之内豊とか瀬戸内寂聴とか、もしくはKISSあたりからいつお叱りを受けてもおかしくない状況(無問題なのは、野中英次をサポートした編集者・林田さんそのまんま林田くんくらいじゃなかろうか。)ではあるのだが、
・内容があまりにバカバカしすぎるので相手する気が起きない
・名前とキャラにほとんど関連がない
というような点でお目こぼしされてきた節が多分にあると思う。

「授業にほとんど出席せず、他校の生徒との抗争に明け暮れるなど素行の悪い学生」ばかりの学校に自分の名前が許諾なく使われて不快…か…確かにごもっともなのだが…
「授業」、どころか「教職員」の存在の有無すらハッキリせず、「抗争」といっても、宇宙人やゴリラや乗り物酔いやハチミツボーイのうちにうやむやになるばかりのものだけど…
あ、今気付いたが、この学校は「底辺校」という設定の割には、「出席率」は高いなあ。
出席が取られているかどうかは別として。
今回の差し止め要求は、映画に関するもののようだが、

 代理人の乾裕介弁護士は「今後、原作の漫画についても、連載の中止を求めるなどの対応を考えている」と話している。

ともあるので、結果次第では漫画の連載(流通も?)も危ぶまれそうで気になる。

むしろ作品自体よりも、「作品、というよりむしろ漫画自体へのパッションの著しい欠如」で知られるのなーが、この一件でメンドくさくなり、連載どころか漫画家生活そのものに嫌気がさして、全部放り投げてどっかに行っちゃいそうなのが不安だ。もうそれこそ今にも。

名前どころか容貌そのものまで使用されているフレディ・マーキュリーはどうだろう(いや、もう死んでるんだけど)、と考えた時、なんだか何の根拠もなく、「フレディだったら笑ってお目こぼししてくれそうだなあ」と思った。本当に根拠はないけれど。
クロマティについても、当時の気さくなイメージから、大半の人がそんなイメージを持ってしまっていたのだと思う。実際は、イメージよりもずっとマジメな人だったんだね。

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ストレッチマン

朝っぱらから転げまわって笑ったネタ。
徳田隆宏!!」(「ワラタ2ッキ」より)

コメント欄を読んでいくと、コラ説があるのだが(まあそうあって欲しい絵ではある)、それにしても

*擬音が「バーン」でも「パーン」でもなく「ハ`-ン」
*腕がコラだろうとそうでなかろうと、ドア・カベ・書棚の厚みが初代リカちゃんハウスなみに薄い。ベニヤか。
*ドアを閉めても、なお人一人出入りできる程度の大きな空間が残る。

など、一コマにツッコミどころを詰め込みすぎ。

このモト漫画は、「少コミが現在のエロ本路線に至るうえで大きな役割を果たした」という新條まゆ(「快感フレーズ」の名前だけは知ってた)の「ザクロの実を暴いて」という作品だそうな。
ちょっと調べてみるだけで、この人が「トンデモストーリーと、それをしのぐ超画力」で伝説的な存在である事がわかった。

上のストレッチパワー画像に輪をかけて爆笑したのが、

斬新すぎる射撃姿勢のスナイパーとそのアサルトライフル(「レディコミ激ワロスwwwwwww」ニュー速VIPブログより)

なんじゃこの電動ガンボーイは。昔のゲーセンにあったガンシューティングゲームみたいなサイトマークは。
少女漫画で車や銃火器がメチャクチャな描き方をされる(一生懸命書き込むあまりに、玩具メーカーのロゴとか、実銃にはないバリとかまで入れちゃったりするのはまだ良いほう)たびに、やれ「女はバカ」「女の画力・取材力じゃこんなもん」みたいな言われ方をしてorzな思いをしていたのだが、もうそういう次元の問題ではない。
編集部の人、誰もこのおかしさに気付かなかったのか…

他にも、↑と同作品から
「作者の脳内ではカッコイイ拳法シーンらしい『ふしぎなおどり』」
MP<br />
がすいとられた!

(よく「暗黒舞踏」と呼ばれているようだが、舞踏やってる人に失礼なのであえてその表現を避けてみました)
など、伝説的な絵が目白押しだそうな。
なんだかなー。

投稿者 zerodama : 21:31 | コメント (0) | トラックバック

2005年06月27日

炎の筆魂 参之拳

1・2に収録されなかった短編・中篇集。
何かとダブりがありそうかな…と思いつつ購入したのだが、意外なことにほとんどが初見だった。よかったよかった。
1987~89年頃に発表された作品群がメインなのだが、あとがきで島本先生が文字通り穴に入ったりしながら

調子わるい時は ちゃんと調子のわるいものを次々と描いているな!すがすがしいほどに!俺は!

と力強く叫んでいる通り(そんなコメントでもきっちりと無用に力強いのが島本イズムなのだ)、ちょいと微妙な作品も多い。はっきりいうと、「傑作選」と言い切るには少し弱い感じ。レアなものが多い&単行本発収録の作品も多いのでファン的にはマストバイではあるのだが。
とは言いつつも、私としては島本和彦傑作ベスト3に入れたいマスターピース「マグマ大使 地上最大のロケット人間の巻(1999年 COMIC CUE vol.6に掲載)」が収録されている。島本ファンでこれを読んだ事がない方は確実に損してる、と言い切っちゃうくらい面白いので、未読の人はそれだけでも購入価値があるだろう。

*「一番星のジャッカル」
単独単行本になった「流れ星ジャッカル」のパイロット版?3回の集中連載だったようだ。
ちまっとした作品ではあるが、意外に「流れ星」よりもテンポ良く読めた。
2つを読み比べると、島本和彦の描く女性の体型のものすごい変化が印象に残る。

(初期:ゆかりちゃんに代表されるナイチチ・隙間フトモモスレンダー(松本伊代系))
   ↓<おそらくこの間に森高千里とかを経由>
(その後:メリハリ美乳(時に巨乳も))

*「ファイナルワン」
原作が史村翔。
主人公が腕利きのパイロット。
ジャンボを自由自在に操り、名前が「ダテ」
脇役のアメリカ人が「ミック(もう「ミッキー」って言っちゃえよ)。」
というわけで、なんか明らかに他の大御所先生(「し」の付く人)が描くはずだったんじゃないか?なんてことを失礼にも思ってしまったり…

つまりは伊達さんが「ALICE12」を短編でやりました、という内容。ゆえに可もなく不可もない読後感だが、上記発言から「『マグマ大使』と『ファイナルワン』は別として…」と除外しているので、先生的には思い入れのある作品のようだ。事実、各方面にリスペクトしつつ丁寧に描いたという誠実さは伝わってくる。

*「マグマ大使」
「ジェッターマルスも入ります!」は何回読んでも痺れるね!
そしてサンダーマスク。もー好きにして。

この時期の作品をまとめて読むと、あとがきでも炎尾先生が言っている通り
「ほんとうにロッキー好きだったんだねえ」
というのがよく分かる。
ロッキーに限らず、上に挙げた女性の体型なんかでもそうなのだが、
「その当時、島本先生が何に入れ込んでいたのか」
が、ものすごくストレートに作品に出る人なんだな
、と改めて実感する。

酒井紀子とか森高千里とか宮村優子とかはまだしも、豊田真奈美とか女子プロレスに関しては、今どう思ってるのだろうか。気になる。

作品群の多くは、1987~88年、つまり「仮面ボクサー」や「逆境ナイン」の直前あたりのものだ。
デビュー時期から島本和彦を読んでいる人には、これだけで「微妙な作品が多い」ことに頷いていただけると思う。
本人も、

いろいろなイミで全ての自信を失っていた時期だ!(あとがきマンガ)

と言い切っている。
「炎の転校生」で、天与の熱血体質と、同時に「熱血」に対する絶妙な距離と取り扱いをセンスを披露し、ファンをひきつけた…と私は思う。少なくとも私は「炎の転校生」で大いにグッと来た(80年代にあるまじきガクランのボタンの、石ノ森チックなでっかさからしてグッと来てしまったのだが)。今読むと、悪い意味でサンデー的な「ちんまりとしたまとまり」や、熱血に対する照れ、勢いがまとまりきってない部分も感じるのだが、この後の数作でモロにそれが出てしまっていたと感じた。
「燃えるV」とか「とつげきウルフ」あたりの時期で、きっちり買いながらも「なんかイマイチで惜しい」という飛距離不足の感が否めなかった。正直、この人は「炎の転校生」だけなのかな…と思った時期が少し続き、離れかけたところで「仮面ボクサー」で引き戻され、「逆境ナイン」「燃えよペン」で「やっぱり読んでてよかった島本和彦!」と拳を握った…こんな流れで読んでいたファンはけっこう多かったんじゃないだろうか。
その頃は漠然と「この人って、小学館みたいな大手じゃなくて、徳間とか竹書房みたいな中堅でやりたい放題できる出版社のほうがイキイキするんじゃん!」とだけ思っていた。「少年キャプテン」に大塚氏・ササキバラ氏が関わっていた事の意味を知るのはもっとずっと後の話だ。
そう考えると、島本ヒストリー的な意味合いのある一冊とも言えるのかな…

(朝日ソノラマ:本体838円)

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続・新ワイルド7

ぶんか社の新ワイルド文庫シリーズもこれで最後。エピソード3つ入ってるのでかなり厚い。

クロスがちょこっとだけ登場するのだが、顔つきが変わりすぎてて別人。
もっとはっきり言うと、どこからどう見ても故・八百そのもの。
そんな感じで、望月先生のおおらかさが炸裂。新ワイルドメンバーに対するかなりの「どーでもよさ」が見て取れる次第。

「魔都ベガスを撃て」では、メンバーのほとんどが現地(アメリカ)調達ということで、さらにどーでもよさげなキャラクターが登場して、レミングスのごとくにバタバタ死んでいくのだが、「ラスベガスで飛場ちゃん大暴れ」というアクションの楽しさ、いつもに輪をかけた派手さがやっぱり楽しいんだよなあ。
「どうでしょう」を見て以来、「巨大アミューズメントホテル群のショーは見てみたいなあ」という思いがあるのだが、それがいっそうそそられる。ベガスのあちこちで取材したというのが活かされていると感じた。
なんだかんだ言いつつも、この復刊のおかげで楽しい数ヶ月間だった。
今まで入手しづらかった「新・ワイルド」を通しで読めて満足しているので、これ以上(中途半端なものでなければ別だが)続編とかもなくていいかな、という気がしている。
同時に、「新」を読み通してみて、「やっぱり元祖メンバーは魅力的(もちろんユキまで含めて)だったなあ」という感を強くしたのも事実。
だからといって、キャラの死やストーリーを全てリセットして「マッドブル2000(ダイザブローもペリンも生きていて、パラレルワールド的な作品なのだが、話がメチャクチャな上に、ダイザブローハヘタレでペリンがただのバカ女orz)」みたいなものを作ったりは、間違ってもしないでほしいっす。

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2005年06月24日

ゲッターロボ全書

昨日セブンアンドワイから無事届いた「ゲッターロボ全書」(双葉社)。mixiのゲッターコミュニティで早くから話題に上っていたので、チェックする事が出来た。

これまで、ゲッターロボのデータブックとしては、岩佐陽一の「ゲッターロボ大全」「ゲッターロボ大全G」の内容がディープかつ総合的で愛用していた。ただし、「ゲッターロボ大全G」は1999年の発行で、OVA「真(チェンジ!)ゲッターロボ(略称:チェンゲ)」の最終巻がまだリリースされていない時期の発行。なので、フォローが「アニメ『號』」全話と「チェンゲ」6巻までのダイジェストまでとなっており、「VSネオゲッター」「アーク」「新ゲッター」と、その後発表された作品を含めたゲッター本がそろそろ欲しいところだった。

この「全書」の内容は、前半は原作~アニメ「號」と、「大全」と共通する部分だが、後半はバッチリと「新ゲッター」全話まで網羅。また、単行本未収録の幼年誌・テレビ雑誌版のコミカライズ原稿やカラー原稿など、多少サイズは小さいが目新しい収録も多い。「サンデー」「キャプテン」連載時のハシラの賢ちゃんコメントまでも掲載されているのは、さすが不知火プロ(ダイナミックプロの関連会社)編集・構成だけのことはある。
玩具・グッズ・無版権グッズなどでは、ダイナミック狂(褒め言葉)で有名なふりーく北波さんのコレクションとコメントも拝む事が出来る。
特に無版権(という以前にカンペキな「モドキ」商品なのだが)長方形メンコのうち、「トマホークを振りかざして子供を襲っている(ようにしか見えない)ゲッター1」のイカレ加減は必見。

個人的には、PSのゲーム「ゲッターロボ大決戦!」にも設定資料付きで6P割かれていることが嬉しい。あのゲームのOPとキャラグラフィック(主人公♀はちょいと…だったが)は実によく出来ていた。それゆえに、ゲーム中の3D画像のカクカクさと、キャラクターボイスが残念だったのだけど…
せめて主役3人は、せめて「真」のキャストでやって欲しかったっす。

難点はやっぱり価格。本体3200円はイタかった…
おそらく、色々と版権をクリアーしたりする費用がかかってるのだろうけども…
総ページは350p。ついつい「大全」「大全G」が250pくらいで\1200だったというのと比べてしまう。
この価格なら、「版型を大きくするorカラーページを増やす」のどちらかであってほしかったかな。
でもまあ、内容的には濃厚なので満足。
「ヒドラーが鬼に改造される前は冴えないサラリーマンだった」なんて新事実を読めるのはこの本だけ。要ルーペだけど。

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2005年06月20日

新ワイルド7(文庫版)

今回配本の7・8巻で「新」の分は完結。
次回、「続・新」のほうが同規格で発売され、これまでムックでしか発売されていない「魔都ベガスを撃て」が単行本発収録。このムック、たまたまコンビニでふらっと買って持っていて、「オークションでけっこう高値がついている」と聞いてびっくりしたこともあった。
ぶんか社は時々復刊関係でこういういいお仕事をしてくれるのがいいなあ。
くどいようだが、ホント、徳間の文庫とはえらい違い。

この2冊をまとめて読むと、とにかく水戸っぽが連続して大ケガをしている。
しかも、治りかかって杖とかついているあたりで、また別件でケガをする。
というわけで、2冊通して読んだ一番大きい印象が「水戸っぽカワイソス」。
その上、「エンゼルと結婚してワイルドを脱退したい」とか草波さんに言い出すので、「こら誰が見ても死亡フラグだろ!」と、飛場ちゃん(少なくとも完結までは死なないであろう)よりも、水戸っぽ(新のメンバーは、思い入れとか抱く以前にコロコロ死んでガンガン入れ替わる)の生命にハラハラドキドキだった。

ところで、「音楽関係にメチャンコ(原文ママ)強い」というのが売りのメンバーが一名いたのだが、結局その能力が何にも生かされないまま終わった。何のためのキャラだったんだろう?
というかそもそも、このメンバー、本名も不明なばかりか、ニックネームすらないんだが…
きっと望月先生の中で、相当どうでもいい位置だったんだね…
途中、死んだと思わせる描写もあったが、最後の最後で登場するので、一応生きてはいたらしい。
この作品に関わらず、望月先生は「伏線途中で放り投げ(もしくは忘却)」が多いので、些細な事なのだが。むしろ、ピンピンのテンションの部分と、「どーでもよさげ」な部分の同居が味だったりもするのだが。

巻末に、元・望月先生のアシスタント→タツノコプロ→独立して漫画家になったという某氏からの提供デザインイラスト(飛場ちゃんのバイク)が付いているのだが、この某氏というのが秋山治氏。バイクとか銃とかプラモに対する両さんのこだわりって、もしかしなくても望月先生のソレと一致しているのだろう。さしずめ本田さんは、「バイクの上でだけワイルドメンバー」かな。
今の画風からは望月先生とつながるイメージはほとんどないが、所期の戦記ものとか思い出すと、なんとなく雰囲気は残っているかもしれない。

投稿者 zerodama : 17:00 | コメント (0) | トラックバック

コミック乱TWINS7月号

石川賢の「武蔵伝」読みたさに購入を続けている。
今月号は、セブンイレブン限定の「梅安&義経納涼絵はがき」が付録に。表をよく見ると、「80円切手をお貼りください」。ハガキなのに80円?厚さやサイズの問題だろうか。

*「武蔵伝」
ようやくチャンバラ展開に。燃える。
武蔵すし詰め状態の部屋で、平然とメシを食ってる伊織くんにちょっと萌え。

*「梅安」
今月も同じ顔のキャラがいるよ!と一瞬思ったが、先月出てきた小杉さんが再登場しただけだった。ああよかった。

*「伊庭征西日記」
今回は線が荒れ気味だなあ…と読んでたら、辻斬りされた人間の目ん玉やら内臓やらだけ妙に律儀に力の入った描写。
他の作品でも思ったが、森田先生は臓物関係にリキ入れすぎ。
以前ラーメン屋で注文待ちしながらこの人のマンガ読んでたら、切り刻まれて惨殺された女の子fがぶちまけまくりで死んでる大ゴマ(1P丸々)があまりにリアルで、あまつさえ麺類を食う直前だったのでかなりのダメージを受けたことがあった。そんなことを思い出した。

*「黒田三十六計」
隔月連載なのだが、これが載ってる時も載ってない時も本紙価格が変わらないのが納得いかない…平田ザグレート。

*竜馬マンガ
いやほんとに、誰か何とかしてください…アレ…

投稿者 zerodama : 16:42 | コメント (2) | トラックバック

2005年06月11日

葬列のできる球団事務所

誰が何を思ったかよくわからんのだが、ともかくテレビ朝日で8月から「アストロ球団」のドラマが放送されるんである。
テレ朝の野球中継で、OPとかリプレイ時に「アストロ球団」のショートアニメ(しかもIG製作ときたもんだ)が流れるのもその関連なのだろう。「唐突過ぎる」「いいからベンチとか試合状況を見せろ」「とにかく暑苦しい」など、プロ野球板ではおおむね不評のようだが。

追記:
調べてみたらむしろ逆で、
「テレ朝では、今季のプロ野球放送の演出の目玉として「アストロ球団」のアニメを使用。同漫画がアニメ映像化されたのは初めてで、視聴者から「まさかアストロ?」の問い合わせが殺到。その反響の大きさから実写ドラマ化を決定した。」
という経緯だったらしい。

(「アストロ球団」がどんな物語でどんな試合(むしろ「死合い」)を繰り広げたか知りたい方には、「ノーセーブノークリアー」のアストロ球団コンテンツが激しくオススメ。)
ともあれ、放送開始に向けて、公式サイトの内容が続々整備されているようだ。

原作者・作画者の先生方のコメントも載っているのだが、原作の遠藤先生のがなかなかすごい。

(アストロ球団が書かれた時代は、)野球も巨人がやたらと強くて、野球自体がつまらなくなってしまって、巨人ファンなんだけど「アンチ巨人」という人たちが出てきたような時代――「四無主義」と言われて、オイルショック・不景気、なんだか何をやってもダメだ、先が見えない、という空気があった。そこへ「アストロ球団」が登場し、バカみたいに「一試合完全燃焼」を謳って、先は見えないけど誰かに期待してはダメで、期待できるのは自分だけ、奮起すればおのずと道は拓ける、とやって、共感を呼んだんだと思うね。

「完全燃焼」…確かにそうですが、燃やしたのは命の炎というか、燃え尽きちゃったキャラ多数と言うか、もっと言えば、試合内容以上に燃えた遺体が多かったような…
「奮起すれば」…憤死した方々(勿論「突っ込んだが塁までたどり着けなかった」という尾言う意味ではない)もいらっしゃったような…

とにかく、「やればできる」、そういう昔ながらの哲学が「アストロ」の世界なんだから、「やるしかない!」ってことを言いたいね(笑)。

「やればできる」…えっと…「人間ナイアガラ」くらいなら…なんとかできそうかな…
人間ナイアガラ(あとは勇気と人数だけだ!)

60年代後半~70年代というのは、確かに巨人V9時代であまりにも強すぎ、実際のプロ野球シーンは遠藤先生の言うとおりに面白みに欠けたかもしれないが、野球漫画の世界はかなり発狂した怪作が目白押し。
「アストロ球団」を筆頭に、「侍ジャイアンツ」、「アパッチ野球軍(たまにゃサードに逆送するが)」、またアストロ同様に盲目選手(しかもキャッチャー)が登場、しかも隻腕スラッガー、直球しか投げない主人公などが登場する「男どアホウ甲子園」。これなんかは、原作者がまともに野球のルールを知らないというこれまた別の意味でのどアホウっぷりが炸裂
個人的には、小学生がジャイアンツに入団し活躍、時々王さんとかが宿題を見てあげたりする「リトル巨人くん」あたりもこの狂気の系譜上にあると思っている。
今、これらの巨魁と比べてしまうと、「主人公甲子園のマウンドで、死球を受けて指が骨折していたのにムリして投げて指一本損失、その後代打屋としてプロで活躍」という「どぐされ球団」なんかは金魚のごとく大人しすぎるなあ。

投稿者 zerodama : 08:23 | コメント (0) | トラックバック

2005年06月09日

「20世紀少年」新刊にCDつきバージョン

T・REX:人気コミック「20世紀少年」に復刻CD付録

 1300万部を突破した人気コミック「20世紀少年」(原作浦沢直樹、小学館)の最新19巻(30日発売)に、伝説のバンド「T・REX」の名曲「20thセンチュリー・ボーイ」の復刻CDが特別付録として付くことになった。CD付きのコミックは珍しく、人気漫画と伝説のアーティストの組み合わせだけに大きな話題になりそうだ。
(略)
 その最新19巻に特別付録として付くことになったのが、タイトルのモチーフにもなっているT・REXの代表曲「20thセンチュリー・ボーイ」のCD。この企画のためだけに、73年の発売当時のジャケットデザインで復刻したレア物。部数限定(数字は未定)で、税込み780円(通常版530円)で売られる。

 同曲は第1巻の最初に登場するなど、物語のカギとなっている。編集担当者は「曲を知らない人にもぜひ聴いてもらいたいと思っていた中、T・REXの秘蔵DVDの発売があると知り、この企画がまとまった」と説明。原作の浦沢氏はコミックの内容と同様、中学時代に校内放送で「20th…」を流したことがあり、思い入れは人一倍。今回の異色タッグにも「とても喜んでいる」という。

1巻の「ガーガガガー ガーガガッガー♪」のシーンですな。
私も常常、「20th century boy」を知ってる人とそうでない人は、あの場面のインパクトがまるで違うだろうなあと思っていたので、なかなかいい企画ではないかと。
どうせなら1巻についていてもよかったかもしれない(まだその時点では部数的に読めなかったかな?)。
30代にとっても、T.REXはリアルタイムなバンドとはあまり言えない(マーク・ボランが77年に死亡しているので、物心ついた頃には既に「ロック史」上のバンドと人物だった)。とか偉そうに言ってる私も、きちんとCDを買って聞いたのは、筋肉少女帯の「電波ブギ」がきっかけ(「マーク・ボランのゆーことにゃ~」という歌詞がある。曲もいかにもそれっぽいブギー。)だった。お恥ずかしい。
T.REXのベスト盤は一つ持っているのだが、ジャケット復刻と言われるとちょっと欲しくなってきたかも…

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2005年05月21日

キートン先生ががが

人気マンガ「MASTERキートン」が絶版に至った理由Narinari.com

絶版になっていたとは知らなかったが、こんな理由だとは想像できなかった。

・「MASTERキートン」連載当時、浦沢直樹氏は「YAWARA!」を並行連載していたため、編集部判断で勝鹿北星(菅伸吉)氏が原作者として付けられた。
・ただ、現実には勝鹿北星氏が話を作る機会はほとんど無く、主に浦沢直樹氏と長崎尚志氏が話を考えていた。
・そのため、浦沢直樹氏が「作家としてクレジットが載るのはおかしいから、名前をもう少し小さくして欲しい」と申し入れ。その際、印税比率についても話し合い、今後の増刷分に関しては勝鹿北星氏のクレジットを小さく印刷することで両者が合意。

しかしその後、

勝鹿北星氏と共に「ゴルゴ13」の原作を書き、古くからの「盟友」であった「美味しんぼ」の雁屋哲氏が「『勝鹿北星』の名前が小さくなることは断じて許せない」と小学館に強く抗議したため、小学館が増刷に踏み切れないというなりよ。本来ならば、そんな抗議があったとしても小学館と勝鹿北星氏の間で合意に至っていれば何の問題も無さそうなりが、残念ながら勝鹿北星氏は昨年12月に他界。当事者が亡くなられたことで、事態は小学館と雁屋哲氏との調整という、変な方向へと話が進んでしまっているなりね。

うへー。
ここ数年「美味しんぼ」などの仕事の内容もウザウザな話ばかりだと思っていたら、本人はそれに輪をかけて迷惑を撒き散らしていたんかい。
当初のクレジットや印税配分について当事者間で納得ずくだったのなら、第三者の出る幕ではないと思うのだが。「原作者の地位向上のために」とか考えてるのかもしれないが、今みたいなお粗末な話しか書けない作家にどうこう言われてもなあ~。

ところで勝鹿北星氏の正体については、「工藤かずや説」があって、わたしはこっちに信憑性を感じていたのだけど全然違っていたのですな(工藤かずや氏もかつて「ゴルゴ13」のプロットに関わっていたりした)。

勝鹿北星=菅新吉氏について(はてなより)

「きむらはじめ」という筆名も使っていて、そちらは益田喜頓の本名に由来しているとのこと。
キートンと喜頓のどちらにより傾倒なさっていたかは私は存じ上げないのだが、本当に好きだったんだろうなあ。

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2005年05月17日

2005年6月号の「コミック乱 TWINS」

購入。

石川賢の「武蔵伝
・武蔵さらに増える。
・スパイダー武蔵の正体、予想をはるか斜め上に裏切る。
いやホントびっくりした。
・ココに画像を載せるのは勿体無いので、ぜひコンビニ店頭などでお確かめください。

今月号の最大の見所は、この雑誌のメイン(真打は「黒田・三十六計」だと思っているが、毎月連載ではないのでそーゆーことにしておく)である、さいとう・たかをの「仕掛人 藤枝梅安」。

今回は、梅安先生の旧友で、一度仕掛の仕事をともにしたこともある剣の達人・小杉さんというキャラが登場する。頭にバカがつくくらい律儀でいい人、剣の腕も立つというキャラなのだが、この人の見た目が、先月出てきた悪役の田島という男にソックリなのだ。
あまりにソックリなので、最初誌面をパラパラとめくった時は「田島が実は生きていたとか、そういう展開なのか?でもキッチリ梅安先生に殺されてたし…」と戸惑うほど。
baian.gif
両者をよくよく見てみると、片やいいひと、かたや血に飢えた殺人鬼なので、表情のつけ方などが違うのだが、月代を剃っていない髪型や「さいとうチックな下まつげ」、V字っぽい口元などやはり似ている。
現代もの(髪型・髪の色で描き分けできる)と違い、髪型が限定されるので、時代劇コミックというのは描き手にとってはなかなかに大変なものなのだろうとは思う。
思うが、見た目の似たキャラを出すなら、せめて1ヶ月くらいは間を置いたほうがよかったんじゃないだろうか、さいとう先生…

<その他>
今回は「百人遊女」がなかなかよかった(決してエロかったからではない)。
この人の絵を見ていると、「女の顔が垢抜けるかどうかは眉毛次第」ということをつくづく実感させられる。とか言いながら自分は毎度ボーボーなのだが…

できれば、あの「左手で5分で描いた」みたいな竜馬マンガのページ分だけ銭返してください…

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2005年05月06日

PALM(パーム)

実に久々の「PALM」シリーズ新刊、「午前の光(1)」(通算27巻目)を購入したはいいが、あまりにも久々すぎて、前の話のラストなどをほとんど忘れてしまっていた。で、前シリーズ「愛でなく」を引っ張り出して読み返してたら半日過ぎてしまった。長いんだまたこのシリーズが。

作者が「伸たまき」から「獸木野生」に改名したという事を知ったのは去年のことだった。
この人がパリンパリンのエコロジストだということは、「愛でなく」を1冊…どころか数ページ読めば一目瞭然なのだが、あまりにもモロにエコエコな文字、しかもハッキリ言って「同人とかやりはじめた中学生」のようなイタさも孕んでいて、最初は違和感ありまくりだった。
真相は、作者の公式サイト「BIGCAT Studio」でも明かされていた。

(同サイト「改名のわけ」)
2000年6月21日をもちまして、今まで使用しておりました「伸たまき」というペンネームを「獸木野生(けものぎやせい)」と改名いたしました。

ご存知(かどうか)のように、旧ペンネームは20年ほど前に離婚した男性の名前の部分を拝借したもので、かなり早い時期から「死ぬまでには何としても変えなくては」と考えていたのですが、なにぶんひとつのシリーズを書いているためになかなかタイミングがつかめず、今に至ってしまいました。
PALMシリーズが長期休載に入り、新しい出版社での新シリーズ連載が決定したこの機会を逃せば、二度とチャンスは訪れないと考え、改名に踏み切っております。

とゆーことらしい。
いや、人様の事情にどうこういうつもりも権利もないけれど、「本屋で店員さんに伝えづらい著者名になっちゃった」ことと、「獸」という文字が旧字体なので、変換モードの切り替えがメンドくさくなっちゃったことは確かだ。

この獸木野生という作家は、プロのキャリアは短くない筈なのだが、色々な意味でアマチュアリズムを色濃く残していると思う。それは勿論彼女の作品世界を語る上で欠かすことのできない味であり魅力なのだが、サイト自体にもそれが強く反映されていると感じた。
現在に至る自分の人生と創作の足跡を語る「獸木野生の作り方」あたりはまさにそれで、特に前夫氏とのいきさつはエキセントリックを通り越してかなりメチャクチャで、「そこまで赤裸々に書かんでも」という気もしてくる。が、生い立ちを眺めてみると、「青また青」のビダー・ヴォイドのエピソードの大半が彼女の実体験だということに気付く。父の死とその生涯などは、物語の中ではかなり唐突な印象を受けたが、これも実話だったのだねえ。まさか「妊婦をサンドバッグ…」までそうだとは思わなかったけれど。

「PALM」紹介ページでも、キャラクターへの思い入れや「何歳の時にできたキャラクター」「話の原型は中学生の時に…」というような講釈がまた同人風味で、ヒく向きもあろうかと思う(そうでなくても好き嫌いのハッキリする作家なのだが)。ただ、特に初期は時系列などが分かりにくいシリーズなので、作者の意図やストレートなコメントが聞けるのは貴重。

正直、このシリーズはあまりにも長すぎ、キャラクターも多いので、とっつきやすくはない。独特の絵柄、しかも一発目のエピソードに時系列がかなりあとのものを持ってきているので、相当分かりにくい(私も1巻目「お豆の半分」を読んだ時は「これは何かの続編か?」と思った)。
しかしキャラクターに引きずられて、「あるはずのない海(ここでようやくキャラクターの馴れ初めが明らかになる)」「星の歴史」まで読んでゆくと、かなり逃れられない状態になっている。不思議な作品だ。
PALMを初めて読んだのは、大学時代の先輩のところだった。そこで「星の歴史」まで読まなければ、恐らく後になってシリーズを買い揃える事もなかっただろうと思う。
作者の中では、ストーリーの流れは既にラストまで決まっているようだ。
実際には、今回始まった「午前の光」のあとに、さらに「蜘蛛の文様」、最終編の「タスク」が予定されている(のだが、このペースだと2020年付近がラストであろうとも、もっと延びるだろうとも言われている)が、前々作「オールスター・プロジェクト」のラストで、大まかに主要人物のラストに至る流れが淡々と述べられている。
そこで、主役であるジェームスが「妻とともにアフリカに渡り、その後ロスに戻って1988年(作中の時間は現在1984年)に死ぬ」ということがハッキリ示されている。
ただ、「妻」は誰か、どういういきさつで死ぬのかは(おぼろげなイメージが示される事はあったが)不明なので、今後は「誰がジェームスの妻になるのか(ジョゼが言っちゃってる以上はジョイなのか、やっぱり)」「何がどうなって死ぬのか」を見届けたいという欲求がこみ上げてくる。
このくだりを読まなければ、シリーズの購入を続けていなかったと断言できるほど上手い引きである。くそぅ。まあ、一年に何冊も出る作品じゃなし、いいのだが(勿論バンバン出してもらってもいいのだが、今の連載状況ではムリムリムリムリカタツムリなので)。

この作品の最大の魅力はキャラクターにある。と書くとあまりに月並みなのだが、シリーズを読み進んでいくにつれて、どのキャラクターもたまらなく愛しく(サロニーのような悪役に至るまで)なってきてしまうのは「PALM」特有のものだ。
誰が彼らを一番愛しているって、作者がそう公言し続けてはばからないのだが、その愛が読者にもねじれずに伝播し、共有できるというのは凄い事だと思う。
だからこそ、「自キャラへの萌え」を今以上昂揚させて、読者がヒくようなことにならないように、と祈っている。
「愛でなく」では、作者が「容貌も含めて」自己投影させたルージュメイアンというキャラクターが登場し、今度は作者の(創作に目覚め始めた)少女時代を投影したジョイが表舞台に上がってきた。
しかも前者は「ジェームズと人生と魂を共有する存在」であり、後者は「未来の妻(?…かどうかはまだ不明だが、恋人となることは確かだろう)」。二人もってのは多いんじゃないかとちょっと危惧。そのへんをクールにすり抜けてくれるといいのだが…

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2005年04月25日

はぁとふる売国奴建設

mixiにはけっこう有名人も参加してたりするのだが、田中圭一大先生もmixiやってたと初めて知る。
(あんまりmixiでいろいろやってないもので…)

*はあとふる売国奴建設*
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=299002
(mixiに登録してない方は見れません)

んで、貴重な日記などが読めるのだが(タイトルか本分のどちらかが下品な事が多いのでそれだけで満足だ)、4/22の日記のタイトル
鬼堂龍太郎のモデルはランバ・ラル
にはぶったまげたよ(本分には特にそれに関する記述無しだったが)…
そうかそうか、もう一度「ランバ・ラル」の面影を意識しながら読み返してみよう。また違った味わいが楽しめるかもしれない。

本当はmixiでなくて公式サイトがあればな~と思うのだが、何しろサラリーマン稼業のほうもお忙しいだろうから、そこまで望むのは贅沢というものかも。

投稿者 zerodama : 17:09 | コメント (0) | トラックバック

2005年04月21日

アイダダ アイダ

仕事帰りにジャスコの本屋を覗いたが、田中圭一の「鬼堂龍太郎」がなくてションボリ。店員さんに聞くのがちょっと恥ずかしかったので、新刊予定を指差して「これ、入ってますか?」と聞く私のチキンさよ。
レジに持っていくのはかまわんが、店員さんに尋ねるとなると、何だろう、女一匹、夕方混んでるスーパーで男性店員相手にコンドーム差し出して買うと同程度くらいの恥ずかしさがありますな。
おかげでついこんなもん買っちゃったじゃないかよぅ。
というわけで、

hanabiki1.jpg「花引き ヴォルガ竹之丞伝」1 原作・小池一夫/作画・ふんわり
竹書房 近代麻雀コミックス

麻雀マンガというのは、確実に一ジャンルを築き、名作も珍品も生み出してきたわけだが、どうしても「すみっこジャンル」であるのは否めないと思う。特有の濃さ・男臭さ・裏通り臭さに加えて、「麻雀が分からないと、何が凄くて何が面白いのか伝わらない」という枠組みがどうしても伴うからだと思う。
小池御大、これまでも麻雀マンガをものしたことがないではないが、20年封印していた豪腕(阿佐田哲也や畑正憲らと凌ぎを削るほどの麻雀打ちだとは、寡聞にして前書きを読むまで知らなかった)を引っさげて殴りこんだ入魂の本作。
ハッキリ言って、珍品トンデモの多い麻雀マンガ史に残る大珍品である。と断言してしまおう。
とにかくこいつら、麻雀を打たない。
そう、打たずに「引く」。それのみでこの作品は成り立っているのだ。

ギャンブルマンガの主人公というものは、最初が肝心だ。名作の主人公たちを思い浮かべれば皆そうだが、登場時の初バトルで、「どのような戦い方をする奴なのか」を強烈に印象付け、その鮮烈な勝ちっぷりでキャラをビシッと立ててこそ、読者の目を引くことができる。
そして、「キャラを立たせる」事にかけては自他ともに日本一の自負に溢れる小池御大の仕事。一話目から際立ちまくりだ。

新宿は歌舞伎町の雀荘に、ふらりと訪れた主人公・竹之丞。いいところなく負け続けて、点箱の中はわずかに100点棒一本のみ(器用な負け方だ)。しかし勝ち誇る他メンツに、「続けましょう」と涼しい顔。
さあここからが小池ワールド。
おもむろにCDを取り出して店主に渡し、

「ねえ おやっさン これかけて
 世界の名曲 ヴォルガの舟歌」

ヴォルガの舟歌のCDを持ち歩く雀士。いきなりワンアンドオンリー。
リクエストの曲が鳴り渡る店内。竹之丞も

えいこーら えいこーら
もひとつ もひとつ えいこーら

と歌いながら牌を引いていく。

麻雀マンガでキャラを立たせる一つの方法として、「牌を引く(もしくは切る、哭く)時のキメ台詞」がある。古くは「はっぽうやぶれ」の「オッショイ」に始まり、「背中が煤けてるぜ」「来たぜ ぬるりと」「爆牌」「ツカンポ」等等、まあ色々あるわけだ。
そして竹之丞は「えいこーら」。ある意味、あの「ぶりぶり」にも匹敵する唐突さ。
いきなり歴史を作り出すあたり、さすが小池キャラ。
えいこーら言い始めたら、俄然良いところが雪之丞に入りだす。そして


hanabiki3.jpg
「えいこ~らっ!」
「四暗刻字一色大四喜でトリプル役満!」

先生…手加減ナシにも程ってものが…

さて、小池マンガの名物の一つに、「比翼連理の夫婦バトル」がある。
「デュエット」や「クライングフリーマン」あたりが代表格だが、主人公と魂で結ばれた妻や恋人(このとき、入籍の有無に関わらず「女房(バシタ)」と呼ぶのが基本)が共に死地に赴き命をかけて戦う、というフォーマットだ。そしてこの作品もご多分に漏れず、竹之丞のそばにはいつも17歳のロシア美少女・エペが連れ添っている。
彼女も勿論普通の女ではない。
元アイドルシンガー(あからさまにTATOOを意識したコスチュームが1コマあった)だが、その正体は、

ロシアンマフィアの命を受けてヴォルガ・トレニロブカ研究所が作り上げた世界でもっともツキの流れを吸い込める女
四代に渡り、最高のモチベーションを有する男女を交配させて産ませた・究極の上げマン(ほぼ原文ママ)

である。これが貴方の理性による理解の範疇に収まろうがはみ出そうが、そういうことらしいのである。
彼女が側にいるからこそ、竹之丞は「花引き」と呼ばれるほどの超人的な引きを見せることができるのだ。
んで、「せっかくの逸材のツキを雀ゴロごときに吸い取られ尽くしてはたまらない」とロシアンマフィアが絡んでくる、と。そんな展開。

ところで、竹之丞が「ヴォルガ竹之丞」という名で呼ばれるのにも、「えいこーら」ウルサイというだけでなく、彼女が関係している。

ルビが小さいですが「えいこーら!もひとつ!もひとつ!」と叫んでます

そう、本当にえいこーらえいこーら五月蝿いのは竹之丞ではなく、「ファック中の彼女」なのだ。アレの最中に「もひとつ!もひとつ!」とか言い出す女ってヤじゃないか、なんか。
絶対隣に住みたくない連中である。
ちなみにこの二人、撒き散らした麻雀牌の上でまぐわってる(だからガチャガチャいってる)のだが…相当痛いと思うのだが、小池漫画の中でも屈指の珍SEXではなかろうか。

単行本一冊中にどれだけ色々詰まってンのよ、って感じだが、麻雀マンガにもう一つ必要不可欠なのが「ライバル」の存在である事は言うまでもない。ライバルもキャラが立っていて、絶望的な強さを見せれば見せるほど戦いには緊張感が生まれ、主人公が光り輝く。
1巻での竹之丞のライバルは、「鬼引き」こと「昭和礼次郎」。

殺す前に殺す相手と麻雀をし、相手が勝ったら殺されずに見逃してもらえるが、負けたらその場で殺される

という、殺し屋なんだか雀士なんだかわからないが、いかにも「古い男とお思いでしょうが」って感じの風貌と着流しが渋い男。確実なのは、雀荘の主人はいい迷惑という事だ。彼もまた

日本の帝国陸軍が作り上げた ツキの流れを変える男(原文ママ)

らしい。もうなんだか良く分からないが、1巻の最期では何かと忙しい目に遭う(読むと分かる)男である。

いきなり
hanabiki4.jpg
「麻雀はオカルト」と言い切って演説ぶったり、

毛ジラミを退治するには水銀軟膏を使うしかねえ 他のものはダメなンだ そういうところが好きなのさ」

とシミジミ語りだしたり、ナイスに暇がない。

他にも
・「發」と書いて「ルンバ」と読む
・メンバーみんなパンツ一丁で卓を囲む
・ハジキVS小便
・メンツの後ろに死人放置
・ゴーストタウンの管理はゴーストに

など、見所いろいろ。

「牌引く前に読者引きまくり」とか色々言われてもいるようだが、キャラがこれでもか立つどころかとエレクチオンしまくってるこの作品、なかなか売ってないので(ブックオフに出るのを待つのもあまりにも不確実なので)つい買ってしまった…
2巻は出るのだろうか…
ところで主人公の名前は、やっぱり竹書房だから竹之丞なのだろうか…

その他購入物

*「毎日かあさん 登校編」 西原理恵子

<以下ブックオフ>
*「柳生十兵衛死す」上・下 山田風太郎
*「魔界転生」上・下 山田風太郎
     (ロコツなラインナップだ…)
*「ムーミン谷の彗星」 トーベ・ヤンソン

投稿者 zerodama : 15:37 | コメント (0) | トラックバック

2005年04月18日

圭一さんが望むなら私何を買ってもいいわ

ということで、田中圭一作品チェック。

4/19 集英社BJコミックス「鬼堂龍太郎」1巻発売。

BJの公式サイトには作家ページもある。一時期漫画家専業になったのかと誤解していたんだが、今なおサラリーマン(しかも出世しとるよ!)兼業だったのね…

プロフィールページを見てみる。

「コンピューターソフトウェアの販売」ってのは、「特技」のカテゴリに入るものだったんですね、先生…

投稿者 zerodama : 13:50 | コメント (0) | トラックバック

2005年04月17日

圭一さんに一生ついていきます

今日購入した本とか。

*死ぬかと思ったH*
田中圭一(原案協力・林勇司<Webやぎの目>) アスペクト ¥1000

Webやぎの目の人気コーナー「死ぬかと思った」から、お下劣・シモ系ネタを抜き出して、田中圭一が味付けする(勿論例の芸風の絵柄で)という構成のマンガ。ゴラク増刊に掲載されていた作品をまとめたもの。

このコーナーは大体目を通しているのだが、田中圭一の料理にかかると、知ってるネタでもやっぱり面白い(意外にとシモ以外のネタも混じっている)。田中圭一好きな人ならマストアイテム。
探す時の注意は、これ、あんまりコミックス売り場に並んでいないという事だろう。売れ線コーナー・よくてサブカル系のコーナーに置いてあること多し。購入した本屋でもそうだった。あまり売れ線系統を覗かないので、危うくスルーするところだった。
田中圭一の本は「出れば買い」で購入しているのだが、版型とページ数を考えると価格が高めだとは思う。まあ、「死ぬかと思った」シリーズは全部この値段なのだけど。

*愛斜堂 1*
岡本健太郎 講談社ヤンマガKC ¥514

バードチーフ氏のエントリーに触発されて買ってしまった。読んでなければ多分目に止めてなかったと思う。罪なBlogだ…
内容は上記エントリーを参照していただくとして。絵はハッキリ言ってうまくないんだけど、「間」の芸とか、セリフの妙は持ってる作家だと思った。後半、あんまり(全然)辞書の話してない話が増えるんだけど、これはこれで面白い。個人的にはずっと辞書会議のフォーマットでもいいかなあ。
全体的な雰囲気が、意外と「クロ高」で、林田君が口火を切って前田君で落とす系の室内会話に似ているような気がした。

*真・異種格闘技大戦 1*
相原コージ 双葉社 ¥857

相方が購入。数年前から相原コージに関しては「もう(読まんでも)イイかなあ」という雰囲気だったので、相方も迷ったようだった。私は未読。前半を流し読みすると、マジメに取り組んだ「BOXERケン」というような印象?

*家で庭でキャンプで3倍楽しめる ダッチオーブン*
太田潤 成美堂出版 ¥1200

ダッチオーブン料理本2冊目。フルカラーでこの価格はまあまあかと。
料理名がちょっとイタげなのが多いが、けっこう面白そうなメニューが色々とある。
特に、下火だけでできる台所OKのレシピはありがたい。これから温かくなり、去年購入したダッチオーブンの使い勝手もほぼ分かってきたので、色々試してみたい。

・雅楽戦隊ホワイトストーンズ2 DVD
 ロッピーにて予約完了。(発売は6月)
 今回の予約特典は「ホワイトストーンズグローブ」らしい。それって軍t……
 酒田7号線沿いのローソンが無くなって、最寄の店舗はゆたかのもののみ。撤退するコンビニが増え行く中、酒田市のローソンがなくなると水どう関係の予約に困りそうで危機感が募る。送料高いので…

投稿者 zerodama : 23:40 | コメント (2) | トラックバック

2005年04月15日

BJ大行進

朝一で歯医者。どれほどの大工事かと覚悟して行ったら、この前根の治療をした歯の穴を充填しただけだったので10分程度で終わる。若干腫れは残っているがかなり楽になり、微熱も引いた。何よりも穴開けっ放しだと食べ物のカスが気になって食事した気にならなかったのだが、夜からは完全に普通に飯が食べられるようになったのは嬉しい。お菓子と酒は自粛。自粛するとなるとまた、痛烈に飲みくなったり。

帰り、「コミック乱TWINS」と、「ブラックジャックマガジン」をセブンイレブンで購入。
石川賢の「武蔵」、さらに自称武蔵増える。そしてフリチン武蔵様が可愛くてタマランのですが…
「ブラックジャックマガジン」は、「ヤングチャンピオン」誌上で読みきり連載されているトリビュート企画をまとめたもの。「全頁(590P…)これブラックジャック」というのもなかなか胸焼けしそうな内容だが、執筆陣も、立原あゆみ・たがみよしひさ・青池保子・田口雅之・大橋薫…と様々で、なんとゆーか「BJコスプレ大行進」である。ベテラン陣のBJは、かなり無理があるのも混ざってるが(特に立原あゆみとか立原あゆみとか)、話となるとやはり単なる焼き直しにとどまらず、それなりに読ませる(冷奴先生に関しては…ノーコメントだが…)。主に後半のほうに入ってる、BJエピソードのリライトみたいなほうは、話の内容もほとんど一緒だったりで、「これだったら原作読んだほうが…」というのもけっこうあった。
いや実際、これ買ったのはひとえに青池保子のを読みたかったからなんだけども。
正しくは、「BJがエロイカに特別出演」ってことで。少佐とブラックジャック先生の絡みに違和感がなくて笑ってしまった。いいの私は。ジェイムズ君さえ幸せならば…
「自作にBJを登場させる」つくりでも、やっぱり高倉あつこのショボさとは比べ物にならんですとも。
これからもこの企画は続くようで、今後のラインナップも紹介されている。

・きくち正太のブラックジャック(相変わらず似せる気いっこもなし&カットだけだと男か女かすらもわからん)はまだイイとして、
北見けんいちのブラックジャック………予告カット一個だけでえらい破壊力……

今後もさらに強烈なコラボレートを仕掛けてくれるようなら、また買うかもしれない。

夜、相方とROでペア狩り中、突然サーバーキャンセルを食らう。
ROクライアントではなく、そもそもネットに繋がらないのでプロバイダーの障害かと思い1時間ほど何も出来ず。こういう時にセカンドプロバイダやiモード(今時二人とも音声端末+メールのみ)があればすぐ確認できるのだが、ともどかしい。
復旧してみれば、プロバイダではなくてNTT東日本のほうの障害だったようだ。そらー何ともならんわ。
ROに再ログインしたら、回線が切れて動きが固まった後もゲームのほうは進行していたらしく…すなわち、不可抗力でデスペナ食らっててorz。まあ、経験値50%増し期間ということもあって、1%なんてすぐ取り返せたけれども。

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2005年04月06日

幸村誠の新作

*「プラネテス」の幸村誠、「週刊少年マガジン」にて、「ヴィンランド・サガ」連載開始(「e-manga」通信より)

ヴァイキングものとのこと。アクションがどんな風になるのか(「プラネテス」を通して読んでの印象だと、岩明均ほどじゃないけど、「話は面白いが、絵としてはあまり動かなさそう」な予断をしてしまうのだけど)興味あり。恐らく単行本買いになるだろう。

それにしても、e-mangaって講談社でやってる漫画関係サイトな訳だが、「幸村誠が週刊連載」という事に対する異様なまでのビビリがあまりに率直、あまりに強調なもんで笑えてしまう。編集サイドの生の「期待と不安(まあ普通後者は読者に伝えないものだが)」がバリバリ伝わってくるのもオフィシャルならではの味ってもんか。まるで江口寿史(「BOXERケン」での3ノックダウン制導入(→案の定TKO)が忘れられない)を迎えるかのような戦戦兢兢ぶりがたまらないっす。

投稿者 zerodama : 00:36 | コメント (0) | トラックバック

2005年04月05日

桜多吾作のゲッターロボ

今でこそ、ゲッターロボ全シリーズが(双葉社)文庫で読めるありがたい世の中になったが、それ以前のゲッター者には、「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」「ゲッターロボ號」を統一感ある装丁で再販してくれた大都社こそが「神」出版社であった(勿論今でもそれに変わりはない)。
「ゲッターロボサーガ(スパロボアンソロジーなどに収録されたエピソードや、若干の加筆を加えて再編された部分がある)」として双葉社版が出た現在でも、「てんとう虫コミックス」「秋田サンデーコミックス」「徳間キャプテンコミックス」の初出の体裁を極力再現してくれた功績は大きい。
もう一つの功績は、90年代の復刊ブーム時に、学年誌バージョンまでもビシッとまとめて出してくれたということだ。
「ゲッターロボ大決戦」「決戦!ゲッターロボG」がそれである。

「ゲッターロボ」の正式原作版は、勿論石川賢のソレなわけだが、当時「小学館の学年誌」や「テレビマガジン」「冒険王」に連載されたコミカライズ版もある。しかも作者は石川賢だけでなく、桜多吾作・安田達矢(一部の代筆)も出陣している。それらを集めたのが前出の2冊だ。(この他にも色々あるのだが、そちらは「ゲッターロボ大全」「ゲッターロボG大全」(ともに岩佐陽一著)で読むことができる。)

今回のエントリーで取り上げるのは、「小学三年生」に連載された桜多吾作版「ゲッターロボ」。

桜多版の特徴を挙げてみると、
*TV版の設定に(恐らく各バージョンでもっとも)忠実。
 大魔人ユラーや大枯紋次などの(効果があったんだかなかったんだかよく分からん)テコ入れキャラも登場している。
 もちろんリョウ達も、普通の高校生だ。
*キャラデザも石川賢版の面影は薄いが、TV版のデザインには忠実。
 「あんた誰」ってくらいにハヤトの印象が違うのだが、意外にTVのシャクレ顎なハヤトには近いデザイン。
 また人には得手と不得手ってものがあるもんで、ミチルに関しては石川版よりこっちのほうが断然可愛い。ヘアバンドや服装もアニメ板に準じている。
*かと思うと、突然凄まじい独自性を発揮し、最後は完全に桜多ワールドに突入。
 例:「チェンジゲッター1!」ではなく、なぜか「セットゲッター1!」とコールする。
 例:後続の「ゲッターロボG」のラストでは、全員特攻してきっちり死ぬ。
   (「グレートマジンガー」でも剣鉄也(基本的にテロリスト)が最後に死ぬ)
 例:武器やメカのギミックが突然独自のものになる。
ちっちぇなー
上の図を見ていただきたい。
足の裏の反り返りっぷりも目も引くのだが、やっぱり斧である。
バージョンが進むたびに、アホほど巨大化していくゲッタートマホークだが、この小ささ。そして最大の違和感発生源は、初代ゲッタートマホーク最大のチャームポイントである「刃の反対側のイボイボ」がない、この一点だ。この上ないシンプルさと親しみやすい大きさが、かつてないホームセンター感を生むことに成功している。成功させる意義はよく分からんが。
ちなみにイボイボは第三話から発生している。これもゲッター線のなせるワザなのだろう。そうだよね、スティンガー君。

さて、桜多版の真骨頂はやはり最終話、ということで、桜多版ゲッターの最終回である「第10話」もなかなかたまらないエピソードだ。

冒頭、何の前ふりもなく(コミカライズというものはなべてページが少ないものだ)、地竜一族の手によってゲットマシンが盗まれる。草原でのほほんとダベっていたゲッターチームは度肝を抜かれ、研究所に急行する。
切羽詰るリョウたちに、早乙女博士がこれ以上なく簡潔に事態を説明する。

「すまん ちょっとした不注意で」
「ゲッターロボの強さは きみたちがいちばん知ってるだろう」
「もう どうしようもないだろう」

なんて諦めのいい(危機管理意識の低い)早乙女博士。

敵に乗っ取られたゲッターは、当然ながら早乙女研究所を強襲する。すかさずバリアを展開するが、

所員「うわあ かるくやぶられた

ガキンチョにも分かりやすい簡潔なネーム!低学年コミカライズの教科書ですよ桜多先生!
絶体絶命の早乙女研究所に、帝王ゴールはご満悦。

いいもんだ…

いいもんだ」なんて、「成人した息子としみじみ焼き鳥屋で飲んでるお父さん」みたいなコメント。さすが苦労人ゴール様。味わいが違う。

早乙女博士、絶望的な状況に陥って、生来の狂気を発揮。静止するリョウを振り切って、

「わしに考えがあるんじゃ ゲッターに もっとエネルギーをやるのじゃ」

それに驚くリョウ。
「なんですって! そんなことをしたらゲッターロボが 一年間もめちゃくちゃにあばれてしまいますよ
斧にイボが吹き出ました
当時の小学三年生といえば、実にアホガキ真っ盛りの季節。「暴走」なんて言葉は通じないかもしれない。そこで「めちゃくちゃにあばれてしまう」と表現。しかも「一年間」という具体的な提示が妙に恐い。
まあ結局は早乙女博士の暴挙が功を奏し、
博士「人間には影響のないゲッター線をいっぺんにあびせたから 地竜一族だけが やられてしまったのだ」
リョウ「さすが博士」
    「さあ 研究所を二度と直して ゲッターを二どとぬすまれないようにしようぜ
という言葉で大団円。
さっきのいきさつで、「人類にゲッター線の影響ない」と言い切れるもんなのか、そもそも早乙女研究所に侵入を許したのは果たしてハード的な問題なのか、とか色々疑問は残るのだが、とにかくこんな終わり方をするのだった。気が付けばゲッターチームが一つも活躍してないのが印象的だ。

ここで興味深いのは、「ゲッターエネルギーと暴走」という要素が、恐らくは初めて登場していることだ。
「號」で真ゲッターが登場するまでは、ゲッター線はそれほど気まずい設定のものではなかった。ムサシのケロイドな最期は確かにトラウマインパクトだったが、それも「ゲッターエネルギーを最大放出した熱によるもの」であり、基本的には「人類には有益、ハチュウ人類には有害」なものに過ぎなかった。TV版にいたっては、呑気にゲッターロボ野焼きまでする有様だ。
「ゲッターエネルギー浴びすぎてゲッターが暴走」という発想は、かなりいきなりだが、ここで生まれていた事は確かだ。

ところで、色々なバージョンを読んでいて切実に抱いた疑問なのだが…
恐竜帝国の科学長官って、結局「ガレリイ」と「ガリレイ」のどっちが正しいのだろう…


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2005年04月03日

同じ作品の1巻を二度買わされる屈辱

★「屈辱er 大河原上」(1)(2) 坂本タクマ
 三才ブックス 各¥1050

「コミックバンチ」連載作品なのだが、1巻が出たあとずっと2巻が出ず、「どうしたのかなー」と思っていたら、いろんないきさつの末に、三才ブックスから再編集版が出ていたのだった。
(詳しい事情は、坂本先生の公式サイト「坂本タクマの絶対ギガモトXP」の「製品情報」にて)
ここでのキモは、三才版の1巻には、バンチコミックス版に未収録の回も入っているということなのだ。
その収録回の分は、まだバンチを購入していた頃なので、読んだといえば読んだのだが、どうせ2巻を買うならば…ということで、内容の80%がダブリにもかかわらず、1巻をもう一度買うことになったのだった。なかなかの屈辱である。

坂本タクマ先生は、大学の漫研時代の先輩だった。麻雀が強い人だった。爽やかな毒舌の中にも、何度か新入生の私の暴牌を見逃してくれたりという優しさを持った方で、似顔絵は実にソックリだ。
以前、麻雀雑誌に連載していた「ぶんぶんレジデンス」という作品が単行本になったのだが、残念なことに、続きがあるにもかかわらず1巻しか発行されなかった。
私のサイトのコーナー「ご本の樹海」で「ぶんぶんレジデンス」を紹介したとき、私は何と勘違いしたのか、うっかりと「2巻まで刊行」と書いてしまい、ご本人からお叱りを受けたときはもう、恥ずかしいやら申し訳ないやらでバツが悪かったことを覚えている。

この三才ブックス版刊行の最大の意義は、表紙折り返しでご本人が語っている通り、「待望の2巻目」ということにある。なかなか単行本が出にくい短編ギャグ作家の心の叫びなのだろう。坂本先生は基本的にクールな人という印象が強かったが、もう2巻に対する喜びようったらない。

<作者コメント引用>

正直に言って、本作品の1巻には何の興味もなかった。2巻こそが坂本タクマにとって重要なのだ。生涯初の2巻が。なんなら1巻を飛ばして2巻から出してもいいくらいだ。(中略)2巻が出る夢を何度も見た。町ですれ違った人が「ニカン」といったような気がして振り返った。(以下略)


作者コメントを読むだけで目頭が熱くなってきて、「ああ、なんだかやたらといい紙を使っているせいか単価がちょっと高いような気もするけど、買ってよかったなあ」という気分になってくるのだった。
ところで、作者自身が喜ぶのはいいとしても、編集までそれを前面に出しちゃって、前面どころか帯にまで明記しちゃうのは出しすぎにもほどがあるんじゃなかろうかと。


こんな帯ありかいw
「待望の2巻」の左上にしっかりと「作者」。そこまでせんでも。そこまでされたら、いつもは捨てる帯もキープせざるをえない屈辱。

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2005年04月02日

超護流符伝ハルカ

超護流符伝ハルカ 石川賢とダイナミックプロ
学研GSコミックス(\524 2005/4/26)

タイトルは「ちょうごるふでん ハルカ」。週刊パーゴルフ別冊「コミックビッグゴルフ」1~6号掲載。
どういういきさつで企画されたのかは知らないが、「石川賢のゴルフ漫画」というだけで、戦慄をおぼえるには充分だろう。

<ストーリー>
一流の素質とテクニックを持ちながら、亡き父親譲りの「ノミの心臓」のせいで、ここぞという時に成績を残せないイマイチゴルファー・春野遥が主人公。

遥のキャディは実の祖母。ここ一番の弱さの原因である「心の鬼」を取り除くため、怪しい研究所のサイコドクターに依頼し、遥の精神にダイブしてもらう。試みは成功し、「伐折羅光臨!」の一言で、遥の奥底に宿る鬼神・伐折羅神将が覚醒。天性の素質と、それを凌ぐ超人的なパワーを発揮できるようになる。(ただし一時間に一回しか呼び出せない)

しかしそのパワーたるや、ドライブショットで大木を吹き飛ばし、バンカーを打てば土手を崩す…という分かりやすいものだったため当然っちゃ当然ながら、ゴルフ場からは出禁、日本のゴルフ界からは追放の憂き目に合う。

復帰して普通のゴルフをやりたい遥の気持ちとは裏腹に、悪の企業買収組織デストラップとの戦いの矢面に立つことになる。デストラップの本当の目的は、日本の神が宿る要所要所のゴルフ場を乗っ取って破壊し、「神国日本の崩壊(いや、本当にこういうネームが書いてあるんですぅ)」を実現させる事だった…

てなわけで、当然ながら普通のゴルフはしてないゴルフ漫画。
タイトルからして、主人公は女かな?どんな「マッスルほかほか姉さん」なのかな?と思ってたら、頭ツンツン系のマッチョ兄さんだった。伐折羅だからツンツンなんだねえ、なるほど。帯を見れば分かるが、恐らく「超人ハルカ」というあおりをつけたいだけだったのかもしれない。
さすがに星間戦争までは発展しないものの、要所要所で虚無な皆さんがた(神様系)のお姿が背景に出てきたり、「平安京陣形がどうのこうの」といったいつもの部分は健在。
全体的に、ハルカが「巻き込まれ型主人公」の性格をいつもより強く持っているので、石川賢の持ち味である「主人公が物語をガツンガツン引き回すダイナミズム」は薄れているかも。
簡単にまとめるならば「日本の命運をかけて、よりトンデモなゴルフコースで戦う、オカルトプロゴルファー猿」ってところだろうか。一応スポーツ物なので、流血内臓指数はごくごく低め。

第二話の扉絵、主人公の背景に、本編に登場しないものも含めて、「これから登場するであろう敵」らしきキャラが描いてある。
話がもっと続けば出てきたのかもしれないし、賢ちゃん先生のことだから、特に具体的に考えてなかったかもしれない。
その中でも是非見てみたかったのがこのキャラだ。
一人称はきっと「ワイ」

もう、あきらかに猿系の顔といい、シマシャツといい
おそらく、とんでもない方法で旗にボールを包ませるようなことをするに違いない。
ああ見たかった。
どうせなら、そういう系統の敵だけにして、毎回いまわの際に、ダイナミックプロのお家芸「●●先生ごめんなさい」で〆る、って形でもよかったかも。少なくとも私は許す。

ところで、読むほうも「ゴルフ漫画とはいえ石川作品」という心がまえで読んでいるもんだから、このばあちゃんのポーズとか
haruka1.gif
背負っているのはゴルフバッグのはずなのに、どうしてもオリジナル重火器に見えてしまう。

全体的に、どっちかと言えば虚無色よりもコメディ感が強いので、評価が分かれる作品かとは思うが、レーベル的に以後の入手が難しそうな事を考えると、ファンなら「手に入るうちに買っとけ」という意味でマストアイテムと言えるだろう。

<この作品から得られた教訓>
  「高原のお社を大切に」

投稿者 zerodama : 19:53 | コメント (0) | トラックバック

2005年03月28日

スネオ隼人、違和感なさすぎ。

朝目新聞」より「チェンジ!猫ガッターロボ&猫ガッターロボ・ギャアーク
(表紙ファイルかタイトルをクリックすると内容見れます)

発見してから随分経つのだが、見るたびに言い知れない満足感をもたらす傑作なのでご紹介。
要するに、「ゲッター風ドラえもん」と、「ドラえもん風ゲッター」なのだが、とにかく上手過ぎ、しかもシーンのチョイスが絶妙過ぎ。
(表紙のデザインも凝りまくり。個人的に「ウザーラコミックス」にツボった。)
原作版「ゲッターロボ」を読んでないと笑い所が伝わりにくいと思うので、一応既読推奨。

このネタの作者「調布市民」さんって、とんでもない腕の職人さんのようで、他にも「アサメグラフ」に掲載されている「漫画家17人によるブラックジャック」「14人によるブラックジャック」「幽波紋画談」などもオススメ。

もう一度「猫ガッターロボ」表紙をよく見て、ガッター2(でいいんだよね?)の頭のてっぺんに毛が三本生えていたのに今更ながら気付く。
こまけぇ;

投稿者 zerodama : 18:09 | コメント (0) | トラックバック

2005年03月24日

石川賢の新連載

◆「武蔵伝~異説 剣豪伝奇~」 石川賢
   リイド社「コミック乱 TWINS」4月号掲載

朝、相方を駅に送った帰り、セブンイレブンで見かけたので購入。

【ストーリー】

各地に、宮本武蔵宛ての触書高札が立てられた。一見単なる法事の案内に見える触書、しかしそれは暗に「将軍御前試合に参加し、柳生但馬守宗矩と立ち合い、破るべし」という意味がこめられていた。
この高札に導かれて、何人もの「武蔵」を名乗る武芸者が江戸を目指す。
京の辻斬り「宮本武蔵玄信」、江戸を目指す「宮本武蔵義経」、道中彼と出合った「宮本武蔵(たけぞう)」とその息子が登場。
果たして本物の「宮本武蔵」は誰か、そして宮本武蔵を召集する高札の真の目的とは?本編の主人公はどの武蔵?という謎を提示しつつ次号へ。(カラー表紙込み32P)


最近、単行本まとめ読みばかりで、石川賢を雑誌連載で読むというのが実に久々だったので、「32Pって短っ!」と蛇の生殺し気分。何しろ賢ちゃん先生は「2話目から早速暴走する」のが定石なので、次回も買ってしまうかも。
映画「二人の武蔵」をはじめとして、「複数武蔵もの」というのはミニジャンルを形成してると言っていいくらいポピュラーな素材なのだが、「異説」「伝奇」なんてタイトルに付けちゃったからには賢ちゃん先生に「何やってもいいっすよ」と野放しにしたようなもの。今後も「メカ武蔵」「全身重火器武蔵」「ドグラ武蔵」「時をかける武蔵」「巴武蔵」など続々登場しても驚かない覚悟完了。むしろウェルカム。

んで、久々に連載形態で読んで感じたのは、思いのほか「石川賢の書く第1回って、教科書的と言っていいほどきっちりしてる」ということ。
とかく石川賢といえば「暴走機関車」「良くも悪くも無計画」「溢れる『そんなのアリですか(アリですね)』感」ばかりがクローズアップされがちだが、キャラの魅力をしっかり出しつつ、「いつ・どこで・誰が出てきて・何が起ころうとしているのか」を提示し、かつ「なぜ・どうやって」という部分への興味を書き立てて次回に引く、という第一回の機能をちゃんと果たしている。そういう印象を受けた。
それゆえ、「一回目は割とおとなしい」印象も。これは多分にコンサバ志向が強いと思われる同誌読者の反応をうかがいつつ、雑誌カラーも意識しているのかもしれないが、「まあ初手からガトリングガンはまずいっしょ」的な配慮が見て取れる(ガトリングガン登場を確定と思ってるのもどうよ、ってもんだが

ところで、漫画版石川賢スレでは、冒頭に登場する宮本武蔵玄信を「手数の多い奴」と表現している人がいたのだが、

ネタバレ注意画像

↑そういう意味で「多い」んかい!

こういう漫画を書きながらも「おとなしいなあ」とファンに思わせる。賢ちゃん先生は本当にスゴイよ。

ところでこの雑誌、時代劇専門コミック誌なんだけど、普段あまりこの手の雑誌を読まないので、「どのページをめくってもチョンマゲ」というのは実に新鮮な感覚だった。
さいとう・たかをの「梅安」はいつもながら安定して読ませるのだけど、正直、全体的にあんまり読む所ないなあ。特に三山のぼるって、こんなスカスカの絵だったっけ。モーニングで描いてた頃は、少なくとも女性はもっと華麗な線で描いてたような気がするんだけども。
あと、近藤ゆたかのコラムを読んで、ジョージ秋山の「戦えナム」って漫画がものすごく読みたくなったっす。

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2005年03月21日

神州纐纈城

★神州纐纈(こうけつ)城(全4巻 講談社)
 原作:国枝史郎 作画:石川賢

仕事が終わってから読了。
国枝史郎の未完の大作を、石川賢が「自分の手で完結させる」と燃えて描ききった。
勿論、ファンであれば「その前に完結させるべきものが色々あるんじゃないのセンセ」とか、そーゆー無粋な突っ込みは当然抱くんだけども、いつもながらの怒涛の迫力に置き忘れてしまうのだった。

 武田信玄の若き家臣・土屋庄三郎は、ある夜更けに道端で見すぼらしい物売りから「布を買わないか」と声をかけられる。深紅の美しさをたたえながらも、あまりに禍々しい色合いために誰も買ってくれない、と物売りが語るその布は、人間の生き血で染められた「纐纈布」だった。物売りはさらに「纐纈城」と、出奔した庄三郎の父のことを語る。庄三郎の運命はその瞬間から激しく大きく揺れ動いていった…
 富士山麓の霧に包まれた謎の水城「纐纈城」では、業病に蝕まれた仮面の城主のため、捕らえた人間の生き血を絞り、臓器を取り出しているという。突如出奔した庄三郎・それを追う鳥刺の高坂甚太郎・塚原ト伝・原作には出てこないんだけど織田信長…がそれぞれの目的で纐纈城の謎に迫る。

 3巻までは(一応)原作の流れに沿ったストーリーで、4巻目が「石川版纐纈城」ということらしい。
 もともとこの話は、「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」にある「慈覚大師が唐に渡った時に、旅人を捕らえて生き血を絞り、その血で染めた布を売るという『纐纈城』に騙されてとらわれ、危機一髪だった」というエピソードに発想を得たものなのだが、もう纐纈城のシーンは「血で血を洗う」というのが比喩でもなんでもねえという凄まじさ。ダイナミックプロの社風にぴったりフィットした世界観の中で、賢ちゃん先生の筆も絶好調なのであった。

 なんと言うかこの、「アニメとか映画にできそうもない」「放映配給できそうもない」「いつR指定ついてもおかしくない」「それどころか回収騒ぎになっても不思議じゃない流血ハラワタっぷり」。これが永井豪ワールドと石川賢ワールドの差なんじゃないかと。
 そしてファンは「こんなにやっちゃっていいの?いいの?」「オレはいいけど!(by「へんちんポコイダー」)」と痺れまくるわけで、それが石川賢的快楽なんじゃないかと。

 原作では、纐纈城主が事切れた(?)ところで終わっており、纐纈城や城主の正体、庄三郎のその後など諸々の謎が投げっぱなしということなのだが、いつも引きずられがちな「虚無ワールド」にトリップすることなく、力技で終わらせながらも後への恐怖も匂わせるというラストは悪くないのでは、と思う。(原作を読んでいないのできっちり評することができないのだが)
 ただ、最終的に神の側が地獄側に勝利するというラストに、なんとなく予定調和的な食い足りなさを感じてしまうのも否めない。おそらく、最近「天国も地獄も関係ないわ~!」な無法パワー炸裂の賢ちゃん作品ばかり読んでいたせいだと思う。ゲッター線、というか石川線の被曝ゲージがますます上がっておる次第。
 ところで、庄三郎を追う甚太郎の仲間として、なぜか剣豪の「黒木豹介」が登場している。
 「極道兵器」にも、「赤虎さん」が登場している(しかもご丁寧にベレッタでヘリでもなんでも兵器で撃ち落す)し、この赤虎さんと容貌が一緒なので、間違いなくあの特命武装検事だと思われ。
 石川先生、黒豹シリーズ好きなのか?好きそうだけど。

 夜中、この物語の原点となった「宇治拾遺物語」の原文をネットで探す。駒澤大学でテキスト化したものもあったのだが、読みやすいPDFも別サイトで公開されていたのでダウンロードして印刷し、読む。思えば古文読むのって久しぶりだなー。この話、文法的に難しいわけでもないので、学校に勤務していた頃に生徒に読ませればよかった(悪趣味)。

投稿者 zerodama : 20:38 | コメント (0) | トラックバック

2005年03月20日

柳生十兵衛死す

柳生十兵衛死す
Amazonより、「柳生十兵衛死す」と「神州纐纈城」届く。
最近もう本当に石川賢の漫画しか買ってない。今のダンボールに虚無戦記とかゲッターとかうず高く積まれていると、明らかにその付近だけ空気が違う。ゲッター値とか。

◆「柳生十兵衛死す」(全5巻) [集英社 ビジネスジャンプコミックス]
   原作:山田風太郎 作画:石川賢

【ストーリー】
山城国相楽群で、柳生十兵衛が死体で発見された。
しかしその死体は、十兵衛とは逆に右目が潰れていた…
当代随一の剣豪の身に何が起こったか?そもそもその死体は本当に十兵衛本人のものなのか?
その死に至る奇想天外な顛末を語る物語が始まる。

時間を一年遡り、慶安二年。金春竹阿弥の能に興じる十兵衛の前に、由比正雪が現れ、自らの軍学同乗の指南役にスカウトする。しかしニベもない態度で応じる十兵衛。キれて襲い掛かる正雪の従者を、奥義「離剣の剣」で軽くあしらう十兵衛を見て、能楽の奥義を悟る竹阿弥。入魂の舞に酔いしれる一同の目の前に、突如現れる武者軍団と機動江戸城。
現れた男は、「もう一つの、忍が支配する江戸時代」を支配する「忍者・徳川家康」を名乗り、十兵衛を「自分の江戸時代を滅ぼす男」であるが故に抹殺すると宣言し、襲い掛かる。

「優れた能とは観客の精神を別世界に誘うもの、それを極めた『影能』は、精神ならず肉体をも別の世界と時間に導く『刻渡り』の装置となる。金春竹阿弥・その子七郎と共に、空間と時間を越えた『時代との戦い』が始まる。

「主人公が死んでるシーンからいきなり始まる(そもそもタイトルからしてそうなんだけど)」というショッキングな構成でつかみはOK。しかし残念な事にこの作品打ち切りなもので、「なんで逆目潰れた十兵衛が死んでたのか」という謎が解明されないまま終わってしまうのが残念無念。1巻2巻書き下ろしで構わないので続けて欲しかった…例によって原作無視の大暴れとはいえ、山田風太郎の敷いた筋はあったわけだし。
ラストの「戦いはこれからだ!」という、ストレートすぎてなかなか誰も使わないセリフに涙。

石川賢が動かす柳生十兵衛といえば、「魔界転生」での実績もあるので、キャラと暴れっぷりには折り紙つき。
「忍者・侍・剣豪・エロ・そしてSF」という山田大サーカスに加え、「重火器・空中戦艦・流血大増量・一瞬だけ虚無」という「石川俺ワールド」がエキサイティングに作用しあい、一気に読ませる展開。ウマナミや月の輪の宮もいいキャラクターで、ホント「打ち切りで途中までなんだけど」という枕つきでしか推薦できないのが口惜しいっす。

ツボ:(十兵衛のセリフ)
   「(敵の忍者を斬り捨てて)俺の刀の切っ先の届く奴はすべて斬る!」
   「(鎖鎌の忍者に銃ぶっぱなして)切っ先の届かない奴も殺す!!」

「撃つ!」じゃなくて「殺す!」って辺りがイシカワイズム炸裂で素敵過ぎ。

まあこの無念さを晴らすため、近々原作の方も是非読んでみようと思う。
ええ、オトナですから、「石川版を読んで原作読んだつもりになっちゃダメ」ってことくらいは分かってますともさ。

明日の仕事のプリントなど作りつつ(年末にレーザープリンタ購入して本当に良かった…)、5巻まで一気に読む。纐纈城は時間がないのでまた明日。

投稿者 zerodama : 23:31 | コメント (0) | トラックバック

2005年03月15日

小池せンせいにまつわるエトセトラ

 小池一夫作品と言えば、シトシトピッチャンであったり多分にエレクチオンだったりするわけだが、何より特徴的なのは「あンた~~」とか「そうなンだ」などの、「『ん』がことごとくカタカナの『ン』で表記される」こと、というのに異論は出ないだろう。
 ネームだけならいざ知らず、中には「涙弾(るいだン)」のごとく、作品のルビにまで自己主張しているものまである。(サブタイトルとなると列挙に暇がない)
 確かにこれ、見ただけで勢いというか独特のリズムを生み出しているし、「マンガでは字面もまた絵面」であるから、「誰がどう見ても小池作品」というインパクトを与える事にも成功している。

 この起源については、以前漫画板の小池スレで興味深い説が出ていた。要約すると

若き小池一夫氏は、直木賞作家の藤原審爾のサロン(当時「藤原学校」と呼ばれ、文壇に影響力が大きかったらしい)に入ることを切望していた。
しかし、藤原氏に気に入られず(一説には、小池氏は歯槽膿漏で口臭が強かった事で嫌われたとか)、サロンに加えてもらえなかった。
その後小池氏は山手樹一郎に師事、時代小説方面へ歩み学んだ。
「ン」表記を使用していたのは藤原一門で、小池氏が「ン」を使い続ける背景には、捨てきれぬ憧れとルサンチマンが根底にある。

という話で、ドラマとしてはなかなか面白い。

で、先日小池一夫オフィシャルサイト質問コーナーに、そのものズバリの質問(Q5)が投げかけられていた。
小池サイドの公式見解としては、
「ネームが妙な部分で区切れる事によって『なぎなた読み(詳しくはリンク先参照)』を起こさないように、また『字も画』なので、見やすく、読みやすくするように」
ということらしい。
確かに漫画のネームは、フキダシに格納される関係上、普通の小説などより頻繁に改行される。
しかし改行場所は写植の入れ方一つでどうにでも読みやすくできるし、「ン」にすることによって「なぎなた読み」が防げるかどうかというのは疑問なのだが、まあ後半の方がメインの理由で、要は「より分かりやすく、インパクトが伝わりやすく」なるように、ということなのだろう。

仮に理由が前者(藤原学校説)にあるとして、公式で書くようなことでもないわけだ。
二つの理由を総合して、
「『ン』を使っていた藤原学校には思うところはあるけれども、自分が考える表現技法としては優れているので使っている」ってところなのだろうか?
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ついでにもう二つほど小ネタ。
「ぼくらのマジンガーZ」「Zのテーマ」「おれはグレートマジンガー」「勇者はマジンガー」「電子戦隊デンジマン」などをカラオケで歌った際、「作詞:小池一雄」というクレジットが出て驚いた事のある方もいると思う。
一部で「小池一夫とは別人」説が流布しているが、これはれっきとした本人の仕事(小池「一雄」は60~70年代の筆名で、「子連れ狼」などの発表時にもこの名前だった)。
ということで、これらの歌詞を小池調にリライトしてみると、なんつーかもう、タマランものがある。

小池一夫は、かつてさいとうプロのスタッフで、のちに独立した。
「ゴルゴ13」の初期のプロットなどに関わっていたとのこと。
そう考えると、ゴルゴ1巻で「いきなりブリーフ一丁ゴルゴ」が登場するのも、ものすごい勢いで納得できてしまう。

投稿者 zerodama : 01:27 | コメント (0)